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【首都圏】

<談論誘発>沿道住民の協力不可欠 無電柱化条例案東京都が提出へ

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◆東京都道路整備保全公社理事長・横溝良一(よこみぞ・りょういち)氏

 日常生活の中で、電柱や電線を意識している人は意外に少ない。電柱などは都市景観を損ねているだけでなく、震災時に倒壊すると救援救護活動の妨げになり、撤去しなければならない施設である。

 東京都は無電柱化推進計画を策定、九百キロメートルを超える道路の無電柱化事業に取り組んでいるが、ロンドンやパリが無電柱化率100%に対し5%弱。道路が狭く電柱を撤去するのに、既存の上下水道やガス管等を再配置、地下に埋設空間を設けなければならない。その上、埋設物の移設工事とともに新たに地中化する電力や通信、有線テレビ(CATV)等の電線事業者との調整に長時間が必要。無電柱化の完成に一区間で通常七年間かかりコストも高い。

 電柱がなくなると、トランス(変圧器)等の機器は地上に置くことになるが、狭い区市道等では設置場所が限られる。仮にその技術開発が進んでも限界があり、住民敷地を活用するしかない。無電柱化の推進は、必要性を沿道住民に理解してもらい、協力を得やすくすることから始める必要がある。

 都は、六月議会に都道府県レベルでは初の無電柱化条例案を提出する。都道全線で電柱の新設を禁止するという内容で、可決されれば無電柱化推進の第一歩となる。

 ただ、都内の区市道等の整備にあたっては、沿道住民の協力を得るためのインセンティブ(誘因)が不可欠。住民敷地への機器設置には、施設のデザイン化を図り、敷地と調和させることはもちろん、敷地全体の固定資産税の減免など、土地の価値と利用制限に見合う対応がなければ協力が得られないだろう。

 工期の短縮とコスト削減には住民や商店街、電線事業者と連携してトランスと街路灯を一体化したソフト地中化、観光地などで実績がある住宅の軒下配線や裏配線、鞘(さや)管方式や車道埋設等を組み合わせて、地域の実情に応じた工夫も必要だ。

 都道など広い道路では歩道でなく、車道を活用することをもっと考えるべきである。既存の下水管や水道管を移設する必要がなく、工期の大幅短縮とともに費用削減も期待できる。歩道の街路樹を保全できるため、住民の理解も得やすく可能な場所から積極的に採用する。

 東京都墨田区の「タワービュー通り」では電柱がなくなりカラー舗装や斬新な街路灯も整備。電線のかからない美しいスカイツリーがみられ、沿道の街並みも変化し始めている。無電柱化は、都市構造を変える可能性を持っていることも忘れてはならない。

 1955年生まれ。東京都建設局長、東京都技監を経て2015年7月から現職。今年3月まで首都大学東京客員教授兼任

 <無電柱化> 電線を道路に埋めるなどして電柱をなくすこと。電柱は全国で3500万本以上、東京には100万本以上ある。国は昨年12月、「無電柱化の推進に関する法律」を施行したが、無電柱化が進む東京でも無電柱化率は国道で70%、都道で35%止まりである。道路延長の約9割を占める区市町村道はわずか2%にすぎない。狭い道路でもトランス等の地上機器の設置には標準で50メートルに1カ所、2平方メートル程度の面積が必要。さらに地中化後の停電に対する安全対策も重要な課題。狭い道路が多い都内では埋設後の安全管理も慎重な対応が必要だ。

 

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