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【首都圏】

<しみん発>船を修復 被災地に寄贈 神奈川県三浦市の「トレッキー」・新田肇さん(61)

被災地へ贈る船の寄贈式で、仲間と共にほほ笑む新田さん(右端)=今年7月、神奈川県三浦市で(本人提供)

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 東北の海に笑顔を取り戻したい−。神奈川県三浦市の外洋ヨットレースチーム「トレッキー」は2011年3月の東日本大震災後、使われずにいる船を修復し、被災地に贈る活動を続けている。チームのメンバー新田肇さん(61)=同市=は「海を、船を愛するものとして、できることを続けたい」と語る。 (福田真悟)

 プレジャーボートなど小型船の損害査定が本業の新田さん。震災後、津波の被害を受けた船の保険請求に向けた査定を求められ、茨城県から福島県までの沿岸部を歩くと、爪痕の大きさに言葉を失った。

 「何か必要なものはないか尋ねると、『全部です』と言われた」。漁業用でない船には保険が適用されないこともあり、「心苦しくて、仕事にならなかった」と振り返る。

 生活を立て直すのに必死な被災者のために何かできることはないか。そう思いながら迎えた一二年春。宮城県沖で開かれたチャリティーレースに参加した際、招かれた高校生が船の上で涙を流して言った。「こんなに穏やかで、きれいな海は久しぶり」

 その姿に心を打たれ、「いつか元気を取り戻した時に海で遊んでもらえれば」と、被災者に船を贈る支援を決断。ヨット仲間に声をかけて使わなくなった船を譲り受け、油壺京急マリーナ(三浦市)を拠点にする「トレッキー」のメンバーと一緒に修復を始めた。

 新田さんを含め、十五人のメンバーは日ごろは別の仕事をしている。部品を取り換えたり、ペンキを塗り替えたりといった作業は、休日などを利用してこなした。これまで届けた小型船やクルーザーは約三十隻に上る。

 「復興支援といっても個人には限界がある。ヨットマンとして、やれることをしていくだけ」と新田さん。この活動のほか、被災地の高校生や大学生らが参加する復興支援のレースも一三年から毎年開催。参加する船は年々増え、今年九月の宮城県でのレースでは九十隻近くが海を駆けた。

 震災直後から被災地に関わってきた新田さんは、こう感じる。「震災直後は船で遊ぶことが後ろめたいような空気があったが、ここ一、二年は変わってきた」。新たな命を吹き込まれた船が、被災地の海で多くの笑顔を運んでくれるのを願っている。

<にった・はじめ> 1956年、横浜市生まれ。86年、事故に遭った小型船舶の損害を査定する会社「アクア船舶鑑定」を設立。代表取締役社長を務める。2005年ごろに仲間と「トレッキー」を結成し、国内外のレースに参加する。

 

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