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【首都圏】

皇室の食材 工夫こらす 創設130年 御料牧場・鈴木稔場長に聞く

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 皇室唯一の牧場として知られる宮内庁御料牧場(栃木県高根沢町)は、今年で牧場創設から130年を迎える。国内で羊毛産業を振興するための拠点となる牧羊場から始まり、天皇、皇后など皇族への日常のお食事や、宮中行事への食材提供を担ってきた牧場の役割について鈴木稔場長(60)に聞いた。 (蒲敏哉)

 −皇室への役割は。

 安全、安心な皇室ホームメードの食材の提供により、皇族の方々の健康保持や、おもてなし行事に一定の役割を果たしていると考えている。牛乳は、乳牛の飼育から搾乳、瓶詰めまで場内で実施。ハム、ソーセージの加工もブタの飼育から缶詰めまで施設内で完結する。レタス、トマトなどの野菜も日々お届けしている。

 宮中晩さん会でのメーンディッシュは羊料理。羊肉は宗教上の制限も少なく、世界基準で肉類の最上位にある。海外からの賓客を皇室がもてなす料理にふさわしい羊肉を育成している。

 春秋の園遊会、牧場で行う外交団接待でのジンギスカン料理でも供されるが非常に好評だ。

 −明治初期からの畜産振興に向けての役割は。

 牧場の源流は明治八(一八七五)年に内務卿だった大久保利通が、着物から洋装の文明開化の流れの中、千葉県・三里塚の田畑に「下総(しもうさ)牧羊場及び取香(とっこう)種畜場」を設けたのが始まり。

 日本には羊がおらず国内で羊毛産業を興す必要があった。その後、明治二十一(一八八八)年に宮内省(現宮内庁)の「下総御料牧場」となった。

御料牧場を見学する参加者=19日、栃木県高根沢町で

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 かつては競馬馬(サラブレッド)の生産も行っており、第一回の日本ダービーの優勝馬は御料牧場産。戦前十二回開催されたダービーで六回、御料牧場産馬が優勝している。全国各地の牧羊業、競馬馬の源流は御料牧場にあるとも言える。

 −「皇族が滞在する牧場」としての役割は。

 貴賓館があり、天皇皇后両陛下、皇太子ご一家が宿泊される。平屋で極めて簡素な造り。

 各地に御用邸がある中、最も大きな違いは、牛や馬、ブタ、ニワトリなどの動物がおり、大根やカボチャなどの野菜類が育てられていること。

 皇室の牧場として、文字通り牧歌的な雰囲気をお楽しみになられていると思う。

 生物学者というお立場からも、場内の動植物に非常にご興味がおありのようだ。子馬や子ブタなどは愛子さまや、悠仁(ひさひと)さまら、お子様の皇族方にも親しまれている。

 −食が多様化する中で、新しい試みは。

 牧場は宮内庁で料理を担当する大膳(だいぜん)課からの注文に応えるだけで、実際、ご日常でどんな料理を召し上がっているかは分からない。

 しかし、牧場で作るハム、ソーセージの場合、伝統的製法だと塩分が強すぎるため減塩を考慮したりもする。野菜でも滞在される皇族方のご意見もうかがいながら反映していくことも大切だと考えている。

 −今後の課題は。

 今は八十歳を超える天皇皇后両陛下のご年齢を考慮され、食材の注文が来ている。いずれ御退位があり新しい天皇が即位される。世代は三十年近く若返る。嗜好の変化に応える準備を怠らないようにしたい。

 牧場ではヒツジやブタなどいずれ食材となるものを育てている。生きとし生けるものの命を頂くことへの感謝を込め手間を掛けている。多くの方から見学希望を頂いているが、牧歌的な雰囲気の中で、新たな発見をしてもらえればと思う。

 <すずき・みのる> 盛岡市生まれ。北海道大大学院獣医学研究科修士課程修了後、農水省入省。主に食肉鶏卵など畜産行政に携わり、農畜産業振興機構シドニー駐在事務所長、家畜改良センター北海道十勝牧場長など経て、2014年4月から現職。

 

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