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【首都圏】

傷痍軍人が語る真実 お蔵入り半世紀…写真集が警鐘 

半世紀近くをへて出版された「忘れられた皇軍兵士たち」

写真

 天皇の名の下に戦争に駆り出され負傷した「傷痍(しょうい)軍人」の姿を記録した写真集「忘れられた皇軍兵士たち」(こぶし書房)が話題を呼んでいる。出版したのはフォトジャーナリストの樋口健二さん(80)=東京都国分寺市。戦争で傷ついた心と体を抱え社会から疎外されてきた人々の写真は、雑誌社などから出版を断られ半世紀近くお蔵入りになっていた。「安保法制や北朝鮮のミサイル発射で戦争を煽(あお)り続ける安倍政権のおかげでこの本が出版できた」と樋口さん。「若い自衛官が他国で戦争に巻き込まれれば確実に傷痍軍人が現実のものとなる」と語る。 (土田修)

 それまでベッドの上でしゃがみこんでいた男性は突然立ち上がり、直立不動の姿勢で敬礼をした。男性は医者と一緒に病室に入ってきた著者を「軍の上官だと思った」という。本の表紙の男性は樋口さんが東京都小平市の国立武蔵療養所(現国立精神・神経医療研究センター)で撮影した。男性は軍隊内でリンチを受け精神を患っていた。

 樋口さんは一九七〇年から三年間、療養所や病院で暮らす傷痍軍人を取材。本書では、二〇〇六年の再取材を加え、▽旧箱根療養所最後の傷痍軍人▽ハンセン氏病傷痍軍人たちの戦後▽結核に冒された傷痍軍人たち▽心を病んだ兵士たち−で構成されている。「オレの体を、辛(つら)いところから撮ってくれ」と脊髄損傷の傷痕が残る背中を見せる男性、金鵄(きんし)勲章を見せながら「二度と戦争をしないでほしい」と訴える元兵士。樋口さんは「彼らは『皇軍』が人間をどのように扱ったのかの生きた証拠だ」と語る。

 戦前生まれの樋口さん自身も戦争で大切な人を失った。あとがきで「安倍さん、戦争ほどむごたらしいものはないのです。歴史観、戦争観、人生観、政治観があまりに安易すぎないだろうか!……敗戦七十二年の歳月は、人びとの心から戦争の虚(むな)しさ、恐ろしさ、悲惨さを忘却のかなたへ押しやりつつある現実にも思いを馳(は)せねばならない」と訴えている。税別二千円。

 

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