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【首都圏】

原発避難者と住民の葛藤 福島で被災の阿部さん 自らの体験映画に

撮影に使ったカメラを手に話す阿部さん=東京・渋谷で

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 福島第一原発事故で福島市から自ら避難した体験を踏まえ、県外に避難した人、地元にとどまった住民双方の選択や葛藤に迫ったドキュメンタリー映画「たゆたいながら」が完成、十二日に東京都台東区谷中のコミュニティースペース「谷中の家」で上映される。 (野呂法夫)

 「福島市は避難区域ではないが放射能が存在する不安のなか、避難した人と残った人で異なるものの切実な状況は続いています」

 大阪芸術大在学中に一人でカメラを回し、監督・制作も務めた阿部周一さん(25)=東京都世田谷区=はこう話す。現在は都内の映像製作会社で働く。

 二〇一一年の原発事故当時、病気で福島市内の高校を休学中だった。自宅周辺の放射線量はやや高く、母親の勧めで東京の祖母宅に一人で避難した。

 一四年、三年ぶりに両親がいる自宅に帰ると、放射能汚染で変わった日常風景に戸惑い、身近な出来事から撮影を始めた。その後、子どもの安全に悩みながら暮らす人たちや、避難した京都の見知らぬ土地で苦労する家族を訪ね歩いた。

 作品は、自分の家族も含めて、それぞれの「選択」から生きる声を紹介。原発惨事がもたらした「たゆたう(揺れ動き漂う)」心の痛みを丁寧に描き出す。

 いつの時代も、震災や紛争など社会の大きな波に小さな家族はのみ込まれ、分断させられ、その語られにくさから溝を深めていく。

 最後に被害者同士に生まれた「分断」について救いの言葉も語られる。「みんな違うんだから一つにすることがエゴ」「国は避難者をなくしたい。避難者がいなくなると、原発事故がうやむやにされてしまう」

 阿部さんは、避難した二年後に大阪芸術大映像学科に入学し、代表作「ゆきゆきて、神軍」の原一男監督の下で学んだ。初作品は今年三月に卒業作品として完成させた。「映画は脱原発や政治の話ではなく、郷土や家族について内なる声を引き出し、異なる立場の人びとが理解するきっかけになれば幸いです」と話す。

 上映会は市民が地域から原発問題を考える「月1原発映画祭」として午後四時から。定員三十人。参加費千円。上映後、阿部監督のトーク、交流カフェ(各五百円)もある。問い合わせは植松さん=電090(1265)0097=へ。

 ほかに十八日午後三時から、東京・下北沢の「本屋B&B」で上映会+トークを開催。入場料二千円(ワンドリンク付き)。電03(6450)8272。

 

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