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【首都圏】

<お空の気持ちが知りたくて 気象予報士試験受験記>(中) 「実技」は時間との闘い

8月に記者が受けた実技の試験問題。時間との勝負でもあった

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 マークシート方式の「一般知識」「専門知識」は運の良さも手伝い、昨年八月と今年一月の試験で何とか合格できた。しかし、その先に最大の難関、記述式の「実技」が待っている。果たして合格ラインの七割の得点を取れるかどうか。

 試験問題には、天気予報でよく目にする地上天気図、上空の天気図、空気中の水蒸気が凝結して水になる露点温度や気温などを示したグラフ「エマグラム」など十以上の資料が添付される。それらを解析して天気図に前線を記入したり、低気圧や台風の発達の見込み、警戒すべき災害や時間帯などを書いたりする。

 文系出身で、もともと物理や地学は大の苦手。理系の知識が求められる試験勉強に、苦手意識が先行していた。ところが実際に問題を解いてみると、そこまで難しいというわけではなかった。気象状況が記されている天気図やグラフを読み解き、それを日本語に直すと解答になる。どこか外国語の翻訳作業に似ていた。

 「お天気がどう変わろうとしているのか、『お空の気持ち』を知るためのお勉強だよ」。興味津々でのぞき込んでくる幼稚園児の娘(6つ)にはそう説明した。

 本番での「翻訳作業」は時間との闘いになる。試験では二問出て時間は七十五分ずつ。長いように思えても、複雑な資料を読み解いているとすぐに過ぎる。しかし、短時間で的確に気象状況を分析する重要性は、二〇一三年九月の台風18号の取材で実感していた。

 当時勤務していた福井県、滋賀県と京都府に「数十年に一度の大雨が降っている」として特別警報が出たのは十六日午前五時すぎだった。特別警報は半月前に運用が始まったばかり。全国初のケースだったが、慌てることはなかった。十四日に「特別警報が出る可能性がある」として、福井地方気象台が報道機関や行政担当者を集め警戒を促すよう呼び掛けていたからだ。

 台風通過後、被害がひどかった福井県南部を取材した。道路に泥が残り、一部では川や湖の水があふれて通行止めになっていた。土砂崩れで孤立し、船での移動を余儀なくされた地域もあった。気象の分析や警報発表が遅れていたらどれほど被害が広がっていたか。

 それでも全国で六人が犠牲になり、以来、気象災害を伝えるニュースを特に気に掛けるようになった。大雨や洪水で命を落とす人はなくならず、今夏も全国で豪雨災害が発生した。

 実技の勉強の合間、テレビで異常気象のニュースを見ていると娘が隣に来て、真剣な表情でこう言った。「みんながお空の気持ちを分かってあげたら、困る人を減らすことができるかもしれないね」(布施谷航)

 ※(下)は25日掲載予定です。

 

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