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【首都圏】

<談論誘発>東名夫婦2人死亡「危険運転」で起訴 「あおり運転」克服の道は

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◆弁護士 高山俊吉(たかやま・しゅんきち)氏

 今年六月、神奈川県大井町の東名高速道路に停止中のワゴン車が大型トラックに追突され、夫婦が死亡、娘二人がけがをする事故が起きた。手前のパーキングエリアで車の止め方を注意されて腹を立てた男が、高速で追いかけ、極端に接近したり、幅寄せや直前進入などを繰り返してワゴン車を追い越し車線に停止させ、乗車していた夫を車外に引きずり出して暴行を加えていたところに大型トラックが突っ込んだという。停止約三分後のことだった。

 神奈川県警は十月、自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪での立件を断念、同法の過失運転致死傷の容疑などでこの男を逮捕した。しかし、横浜地検は危険運転致死傷罪に切り替えて起訴した。前者の法定刑上限は懲役七年、後者二十年だ。

 この男は、危険運転致死傷罪が言う「通行妨害目的で走行中、自動車の直前に進入したり極端に接近し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転させる行為により人を死傷させた」者になるか。「トラックの運転者は前方を注視していればこの事故を避けられた」という警察見解に立てば、あおった男は「自車の運転行為により人を死傷させてはいない」ので危険運転罪が成立する余地がないことになるだろう。多くのメディアは、検察が厳罰要求の世論に押され、罪名変更の冒険に踏み切ったと見ている。

 「運転させる行為」は「停止させる行為」を含むという解釈があるが、この法律の立法段階には、そのような論議はされていない。しかも車両停止と人の死傷の間に「他人の犯罪行為」が介在しても、車両を停止させた者に危険運転罪が成立するというのである。私はその論理にはいかにも無理があると思う。

 危険運転致死傷罪は、成立の時から恣意(しい)的解釈の危険が指摘されながら、社会の耳目をひく事件の発生に合わせて新たな構成要件を加えてきた経緯がある。危険運転致死罪は裁判員裁判になる。検察は裁判員が味方になれば「有罪かつ厳罰」に持ち込めると考えたのだろうか。

 現行法令にあおり運転自体を処罰する規定はない。法令の新設や処罰の強化を強調する声もあるが、それはロードレイジ(激怒)対策になるのか、またそのような対応が適切なのかは、落ち着いて検討する必要がある。

 あおり運転の社会的要因の追究は、現代社会の病理解剖につながる。その解明と根本的な克服にこそ、私たちの目を向ける必要があるのではないか。

   ◇

 1940年生まれ。高山法律事務所主宰。東京弁護士会所属。主な関与は交通事故や道路交通法違反事件など

<「あおり運転」の対応・対策> 第一は言うまでもなくあおられないようにする。あおる側は意図的な迷惑行為を受けたと思っていることが多く、平生から注意深い安全運転が大切。あおられた場合、高速道路では落ち着いてできるだけ左側に寄せ、また可能な限り止まらないようにする。一般道路では赤信号の交差点や渋滞箇所などで止まらざるを得ない場合もあるが、その時でも窓やドアは開けない。ロックを確認し降車して自車に近づいてくる相手と相手の車、とりわけ車のナンバーをスマホなどで撮影。そして110番し居場所をすぐに知らせる。

 

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