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【首都圏】

児童書になった 栃木・那須塩原パン店 秋元社長の活躍描く

「世界を救うパンの缶詰」を企画した関谷由子さん(左)と著者の菅聖子さん=東京都千代田区で

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 しっとりとして軟らかいまま長期保存がきくパンの缶詰で災害地に国際的な支援を続けている栃木県那須塩原市の会社「パン・アキモト」=秋元義彦社長(64)=の活躍ぶりが、児童書「世界を救うパンの缶詰」となって、ほるぷ出版(東京都千代田区)から刊行された。阪神・淡路大震災(一九九五年)を契機に生まれたパンの缶詰が世界中に広まっていく過程を丁寧に追っている。 (小寺勝美)

 同出版の編集者、関谷由子さんはたまたまアキモトの商品開発と社会貢献を知り、児童向けに仕事を紹介する企画を思い立った。「会社員の家庭の子は意外に親の仕事を知らず、仕事を肯定的に捉えられなくてフリーターになってる人も多い」と自らの経験を踏まえて話す。「秋元社長はパンの缶詰を五人目の子どもと呼び『ちゃんと育てなければ』と話します。自分のつくった商品に最後まで責任を持とうとする会社の姿勢を子どもたちに伝えたくて」

 パンの缶詰は現在、個人や多くの企業や自治体、学校が災害時の備蓄用に購入しているが、三年の賞味期限後の処分に費用がかかるのが問題だ。秋元社長は、期限一年前にユーザーに声をかけ、古い缶詰を回収する代わりに新しい商品を割引で届ける方法を考えた。賞味期限の近づいた缶詰は海外で今すぐ食糧を必要とする人々に届けることにしたのだ。「救缶鳥プロジェクト」と名付け、宅配業者と提携して備蓄を回収するルートをつくった。このプロジェクトは「環境と社会によい暮らし」を支える活動に贈られる「グッドライフアワード」環境大臣賞の最優秀賞に選ばれ、九日に表彰される。

 秋元社長を動かしたのは「大所高所に立ち、困っている人、社会のために」と語っていた創業者で父親の故健二さんの言葉だ。製作工程やシステムの細かいところまで取材した著者の菅(すが)聖子さんは「初めての驚きをそのまま書きました。今まで本になっていなかったのが不思議」と笑いながら語る。「お金を得るためだけに働くのではなく社会のため、困っている人のためにできることを考える。そんな秋元社長の姿勢にひかれるし、従業員も胸を張って仕事をしていて他には感じられないものがありました」

 菅さんは子どもたちに「少しでも社会のためにという気持ちを忘れず、仕事や活動に生かしていけば、その先に誰かの笑顔が待ってますよ」とメッセージを送る。大手企業が製造過程でさまざまな不正をして問題となっている中、「パン・アキモト」の企業風土を子どもたちはどう感じるだろうか。

 「世界を救うパンの缶詰」は千四百円(税別)。問い合わせは、ほるぷ出版=電03(6261)6691=へ。

<パン・アキモト> 1947年創業、今年70周年を迎えた。95年の阪神・淡路大震災で被災地支援のため自社のパンを届けたものの保存が利かず、半分以上が無駄になったという。乾パンではお年寄りや小さい子どもには食べにくく、軟らかくて保存の利くパンがほしいという要望を聞き、100回以上の試作を重ね1年半かけてパンの缶詰を開発した。栃木県那須塩原市の本社と沖縄県にパンの缶詰工場があり、アメリカや中国、台湾で特許を持っている。ベトナム・ダナンでもパンを製造。

 

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