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【首都圏】

<談論誘発>ネットの不利益理解して 座間9人遺体事件SNSの負の側面

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◆慶応大学大学院特任准教授・田代光輝(たしろ・みつてる)氏

 神奈川県座間市のアパートから九人の遺体が見つかった事件は、インターネットの「つながりやすさ」が生んだ負の側面である。

 この事件は、捜査段階である。解明されない部分も多いが、被害者が自殺願望を「ツイッター」でつぶやいたところ、容疑者とつながり、言葉巧みに誘い出されて、命を落としてしまった。

 ネットは時間的・物理的な制約なしに、多くの人とつながる。特にツイッターを代表とするミニブログやフェイスブックを代表とする会員制交流サイト(SNS)は、サービスに「ハッシュタグ」「リツイート」「シェア」「いいね」など、つながりを促進する機能がある。

 ハッシュタグは、自分の記事の中のキーワードに「#」をつけると、同じキーワードをいれた記事を探し易くするサービス。アイドルの名前や政治的な主張、食べ物や地域の名前などのキーワードで同じような考え方、同じような趣味や好みを持っている人とつながる。同じような趣味嗜好(しこう)を持つ人とつながるのは幸せだが、負の側面もある。同じような考え方に人が集まると違う考え方の人に対して、排他的で攻撃的になるという傾向があるからだ。

 人はたとえ、どんな穏健な人でも、集団の中での議論では極論に同調しやすい傾向がある。これを「集団極性化」というが、欧米で広がっている排外主義は集団極性化の成れの果て。自分とは違う主張をする人たちへの暴言ともとれる過激な言動も一例だ。

 もう一つの負の側面は「つながりすぎ」。今回の事件では自殺願望の人が、容疑者に言葉巧みに誘い出され、自殺の意思がないのに殺害されてしまった。本来、つながってはいけない二人なのに、人をつなげることに特化したサービスを通じて、つながってしまった故の悲劇である。

 ブログはもともと、米国で表現の自由を守る運動のためにつくられた「道具」だ。それは、規制と戦うため、自分の意見を広め、同じ考えを持つ人を集めることに特化。ミニブログであるツイッターもより遠くに、より多くの人に自分の考えを届けるための道具である。人と人をつなげて社会変革を起こす。

 ネットは生活インフラの一つ。ツイッターをはじめ、各種サービスが気軽に使えるようになり、特性やそのサービスが志向しているものを正しく理解しないと、思わぬトラブルに巻き込まれる。利用者はネットが普及した今だからこそ、それがもたらす「利益と不利益」を理解する必要があるだろう。

      ◇

 1973年生まれ。専門はネットトラブルからの未成年保護。著書に「ネットの炎上予防と対策」など

 <座間事件> 神奈川県座間市の自宅アパートで女性を殺害した疑いで、警視庁に逮捕されたのは無職の白石隆浩容疑者(27)。殺人の逮捕容疑は10月23日、自宅アパートで女性の首を手で絞めるなどして失神させたうえ、自室内のロフトから下げたロープで首をつって殺害したとされる。容疑者はSNSを通じて「死にたいけど一人だと怖い」などと書き込んでいた女性と接触。自身も自殺願望があるように装って、ツイッターでやりとりし、同情や信頼を得たうえで、自室に誘い込み、8月22日以降9人を次々に殺害したとみられている。

 

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