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【首都圏】

<談論誘発>実行の危険性高い「自殺傾向」が深刻 ネットの相談充実したい

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◆日本いのちの電話連盟理事長・堀井茂男(ほりいしげお)氏

 神奈川県座間市のアパートで九人の遺体が発見された事件は、容疑者がインターネット上で自殺願望を書き込んだ被害者とつながって犯行に及んだとされている。

 各地の「いのちの電話」は自殺をはじめとする精神的危機にある方の相談に長年取り組んできた。被害者にわれわれの思いが届かなかったことは残念でならない。

 いのちの電話は、全国四十九のセンターの市民ボランティア相談員による無償の相談窓口だ。うち十四のセンターは、電子メールによるネット相談にも対応している。当連盟はことし八月末から九月初めにかけて、ネット上でリアルタイムに一対一の会話をするチャット相談を初めて試行した。

 自殺の危険性の高い「自殺傾向」は、通常の相談で11・6%(昨年一年間)、月一回行う自殺予防フリーダイヤル相談で26・9%(同)。これが直近一年のネット相談では41・2%である。三十代以下の利用は、電話相談は31%なのに対し、ネット相談79%、チャット相談91%である。ネット上のツールでの相談の自殺傾向は高く、若い世代は電話よりもネット上のツールによる相談を求めている。

 音声会話によるコミュニケーションと、文字のみを介したコミュニケーションは大きく違う。長くまとまった文章の書けるEメールと、もっぱら短文によるやりとりが中心となるチャットやLINE(ライン)とでもコミュニケーションの質は大きく異なるといえる。

 いのちの電話は、精神的な危機を抱えた人に対し、電話による相談が有効であることを実証してきているが、今後新しいツールを使う人々が増えることは確実で、これらのツールによる相談に積極的に向き合っていく必要がある。

 真に質の高い相談活動を行うためにも、これらのツールにふさわしい相談のスキルを磨きつつ、そこで得られた知見を広く社会に還元していきたいと考えている。

 一方で、相談員や運営資金の確保が課題である。全国で現在約六千五百人のボランティアがいるが、主婦や退職者が多い。相談員はピーク時約八千人を数えたが、高齢化などで減少気味であり、各種の寄付も減少傾向にある。

 孤立を訴える人は減らず、予断を許さない状況だ。若者のコミュニケーション方法の変化に応じたさまざまなツールを使って、今後も積極的に取り組んでいかなければならないと思っている。こうした新しい取り組みに関心のある方々に、われわれの活動への積極的な参加や支援を期待している。

      ◇

 1947年生まれ。精神科医。慈圭病院(岡山市)長、岡山いのちの電話協会長。2015年から現職

<田代光輝氏(慶応大学大学院特任准教授)の意見要約>

 (1)座間事件は、インターネットの「つながりやすさ」が生んだ負の側面である。ネットは時間的・物理的な制約なしに、多くの人とつながる。

 (2)SNSのサービスには「ハッシュタグ」の機能もある。記事のキーワードに「#」をつけると、同じキーワードを入れた記事を探しやすくなる。同じような趣味や好みを持っている人とつながるものの負の側面もある。

 (3)ネットは正しく理解しないと思わぬトラブルに巻き込まれる。ネットが普及した今、利用者は「利益と不利益」を理解する必要がある。 (12月9日付)

 

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