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【首都圏】

<談論誘発>格安商品“餌”に高額品売りつけ 催眠商法に近づかないで

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◆立正大学心理学部教授・西田公昭氏(にしだきみあき)

 日用品などを格安で販売した後、「催眠商法」(SF商法)で高額な商品を売りつける被害があとを絶たない。被害者は買うつもりがなく出かけていき、催眠術にかけられたように業者の言いなりになり、高額商品を買わされることから、その名がついた。

 最近は、無料の景品や安価な商品を“餌”に、数カ月以上販売会場に通わせる。狙いを定めた人には販売員が声をかけ、次々と多くの高額商品を購入させる。被害は高齢者に多く、家族や周囲の人が心配して消費生活センターなどに相談するケースも目立つ。当人に被害者意識が薄いのが特徴である。

 どのような心理過程で被害に遭うのか。高齢者は会場に行けば何かと得をするし、友人からの誘いなので、相手が高額商品を買わせる目的があると思っていない。会場に行くと、優しい言葉で販売員が次々に話しかけてきて居心地がいい。しかも何らかの商品がもらえるため、毎日のように通い続ける。

 販売員は、高齢者の泣きどころである健康の話題などを中心にし、売り込む商品に間接的にかかわる話を面白おかしくする。宣伝はするものの押し売りはしない。専門家のような口調に高齢者はやがて“権威”を感じ、満足感を得る。反論できる者はおらず、ある人が商品に高い評価を表明すると「きっといい商品だろう」と錯覚する。

 長期間通って、十分に顔なじみになったある日、こっそり個室に呼ばれる。親切を装う販売員が「特別にあなただけに高額な商品を格安で…」と説明する。高齢者はすっかり信じてしまう。大金の支払いにちゅうちょはあるが、分割払いで支払い可能なので契約してしまう。その後も、販売員に笑顔で次々に商品を薦められて「ついで」の感覚で契約する。そのため、契約のあと身内などが叱ったり、心配して口を出しても、被害者は耳を貸さない。

 被害者の事例などをみてみると、孤独感の強い高齢者は親切にされると、居心地が良くなって、繰り返し会場に足を運ぶ傾向がある。

 周囲の人が、高齢者に頭ごなしに注意すると、隠れて会場に通ったり、高額商品の購入を隠したりすることもあるので、自尊心を傷つけないように被害に気づかせることが大事である。

 効果的な対策としては、会場に通うようになる前に、そうした悪質商法の手口があることを「敬意」を表しながら伝える。そして販売員にいかに巧みに誘われても、絶対に近づかないように意識させることが課題である。

 1960年生まれ。博士(社会学)。破壊的カルトのマインドコントロールのほか詐欺・悪質商法など研究。

<催眠商法相談> 高齢者などに高価な商品を次々販売する催眠商法に関する相談が、全国の消費生活センターに寄せられている。国民生活センターによると、2007年度の相談件数は5055件でピーク。その後、減少傾向になっているが、16年度も1411件。長期間にわたって大量の商品を購入させる「次々販売」などの被害の割合は変わらない。今年1月31日までに契約した被害者の年齢は平均72.5歳で、中には90歳以上も。平均支払額は約180万円で高齢者が標的になっている。老後の蓄えを失うケースもあり、各センターは注意を呼びかけている。

 

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