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【首都圏】

<談論誘発>噴火履歴の解明急げ 日本で80の活火山 被害受ける可能性

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◆山梨県富士山科学研究所長・藤井敏嗣(ふじいとしつぐ)氏

 一月下旬、群馬県の草津白根の本白根山で突然発生した噴火は、規模こそ小さかったが、わが国の火山防災に新たな課題を突き付けた。

 一つは、噴火速報が発信されなかったことである。噴火速報は、火口周辺の登山客には役立たないとしても、後続の登山客などに危険を知らせるものである。今回は短時間で収まったが、噴火は次第に大きくなることもある。噴火直後に発生の事実を知らせることは、被害を最小限に抑えるために有効である。気象庁は庁内を含む情報伝達の仕組みを見直す必要がある。

 第二に、気象庁の火山監視は近年活動が活発な火山に限られていることである。

 一般的には、今回のような水蒸気噴火の前兆を捉えることは難しい。警報には結びつかなかったが、噴火の数分前に、これまで本白根山で観測されたことのない異常現象を捉えた。草津白根山は二十四時間体制で監視される常時観測火山であったからである。

 日本には活火山が百十一あるが、北方領土や海底の火山を含み、国民が噴火により直接の被害を受けるかもしれない火山は八十余り。うち五十の常時観測火山を除いて、残りの火山には異常を検知するための地震計すらない。

 そもそも気象庁が常時観測火山としている五十火山は、最近百年ほどの間に、噴火があったか、地震活動などを観測した火山である。火山の寿命は人間の数千倍から一万倍程度であり、数百年〜千年程度休んで活動を再開することも珍しくない。今回の本白根山がよい例である。百年程度静かだからといって、安心だということにはならない。

 気象庁はこれまで、常時観測火山以外については、地震調査研究のための地震計データを利用して監視していると主張してきた。しかし、その地震計はいずれも火山から遠く離れており、よほど規模の大きい噴火でない限り、火山の異常を把握できない。常時観測火山以外の活火山にも地震計、傾斜計などの設置を急ぐべきである。

 本来なら全ての活火山の噴火履歴を洗い出し、個々の火山の噴火様式の特徴や頻度を理解して、それに応じた観測体制をとるべきなのであるが、専門家のいない気象庁にはそれができない。

 阪神・淡路大震災の後、地震本部は百以上の活断層の活動履歴を計画的なトレンチ調査により解析、活動の評価に活用している。火山も国が責任をもって、全ての活火山の噴火履歴をボーリングやトレンチ調査によって詳細に解析し、適切な観測体制を再構築すべきである。

 1946年生まれ。東京大学名誉教授。NPO法人環境防災総合政策研究機構副理事長。前火山噴火予知連会長。

<草津白根山の本白根山噴火> 気象庁は北側の白根山を噴火の可能性が高いとして24時間監視していたが、1月23日に、警戒していなかった本白根山の鏡池付近の新たな火口群から噴火。噴石が落下し、スキー場で訓練中の自衛隊員約30人のうち1人が死亡、隊員7人やスキー客ら計11人が骨折するなどのけが。同庁は同日午前9時59分から8分間、振幅の大きい火山性微動を確認、この間に噴火したとみている。同日、噴火警戒レベルを上げた。草津白根山で噴火が起きたのは、白根山山頂付近の湯釜火口周辺で1983年12月に水蒸気噴火を起こして以来。 

 

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