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【首都圏】

<談論誘発>帰宅困難者支援プログラム考案 企業は受け入れ判断に

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◆東京大学准教授・広井悠(ひろいゆう)氏

 東日本大震災は、十一日で発生からちょうど七年。この地震で首都圏は、五百十五万人の帰宅困難者が発生、駅や道路が混雑するなど大混乱した。これほどの帰宅困難者数は世界初。これ以降、東京都をはじめとする大都市では精力的に帰宅困難者対策を進めるようになった。

 東京都は二月二十日、帰宅困難者対策に関する今後の方針を検討した「今後の帰宅困難者対策に関する検討会議」の報告書を公開した。私は検討会議の座長を務め「より戦略的な一時滞在施設の確保」を課題の一つに挙げた。

 一時滞在施設は、大規模災害時に買い物客など行き場のない帰宅困難者を滞在させる支援施設のことを示す。都心部では受け入れを可能とする公共施設の数が限られているため、民間の事業所が一時滞在施設の候補とならざるを得ない。しかし具体的にどのような計画・体制で帰宅困難者を収容すればよいか。災害の様相や施設の特性、地域によって大きく異なる。

 熊本地震などのように、強い揺れが複数回発生すると、善意で受け入れた帰宅困難者が施設で死傷した際の責任の問題なども含めると、民間企業による行き場のない帰宅困難者の受け入れはハードルが高い。それゆえ、自治体も協定などによって事業所を一時滞在施設とみなす、備蓄に対する補助制度を創設するなど努力を重ねているが、一時滞在施設の確保は、今なお進展していない。

 私たちはこの点を問題意識とし、事業所などが帰宅困難者の受け入れのノウハウを学ぶ「図上訓練キット」(帰宅困難者支援施設運営ゲーム)を開発した。まず、受け入れを想定する施設の図面を用意し、帰宅困難者の滞留場所や救護スペース、受付、備蓄物資の配布場所などのレイアウトを動線なども考慮して検討。受け入れ人数やどのような支援を提供できるかなどの運営方針も話し合う。

 受け入れ先を求める人は通勤者のみならず、要配慮者や外国人観光客、負傷者などさまざまなパターンが準備され、これらがコマで表現されている。これを図面上に配置し、その上で余震の発生や近隣での火災発生などにどう対処するかも検討するというものだ。

 大地震の時はまず、従業員の帰宅抑制を社会全体で実現させることが必要。スペースや人的資源などに余裕のある企業は、地域の安全・安心、早期復旧を実現するためにもこの訓練キットを活用し、行き場のない帰宅困難者の受け入れがどの程度可能かを検討してもらえたらと思う。

 1978年生まれ。専門は都市防災。博士(工学)。東京大学卓越研究員、JSTさきがけ研究員兼任。

<帰宅困難者> 東日本大震災でクローズアップされた帰宅困難者対策。政府の中央防災会議は「3・11」当日中に帰宅できなかった人は首都圏の1都4県で合計約515万人と推計している。うち東京都内で帰宅できなかった人は約7割の約352万人に上った。一方、東京都は首都直下地震が発生すれば、都内の帰宅困難者は約517万人に上ると予測。行き場がなくて一時滞在施設が必要な人は約92万人に達する見込み。2017年7月時点で、確保済みの一時滞在施設は約32万8000人分にすぎない。施設運営のノウハウの共有も十分とはいえない状況。

 

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