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【首都圏】

<311メディアネット>震災の悲劇 繰り返すな

津波避難施設の前で「自分たちの経験を若い人たちに伝えていきたい」と話す観光協会の佐野由裕事務次長

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 東日本大震災から7年、未曽有の被災を起点に全国各地で「いのちと地域を守る」取り組みが続く。避難の意識は十分か、伝承と人材育成は進んでいるか。「震災と同じ犠牲と混乱を繰り返さない」との誓いを共有する地方紙などの連携の輪「311メディアネット」が最前線の報告を持ち寄り、合同で備えの強化を呼び掛ける。随時掲載します。

<北海道新聞>奥尻島 防災教育 若者を受け入れ

 北海道南西沖地震から七月で二十五年が過ぎる。津波が直撃した奥尻島では次世代に教訓を伝えようと、島を挙げて、防災学習を組み込んだ教育旅行を受け入れている。参加校の中でも、函館市の函館ラ・サール高は二〇一〇年から毎秋、一年生が訪れて、実践的な避難訓練を行っている。

 「津波の発生があります。ただちに避難してください」。防災サイレンが鳴り放送が流れると、島内五カ所から住民役の生徒が一斉に避難。約十分後に高台の避難所に全員到着した。生徒の一人は「実際は三分後に島の一部に津波が到着したと聞いた。本当の避難だったら自分たちは死んでいた」と冷静に振り返った。

 昨年十月、函館ラ・サール高の生徒百五十一人が二泊三日で奥尻島を訪問。避難所開設や誘導を行う救護役と、避難住民役に分かれ、被害の大きかった青苗地区で避難訓練を実施した。

 避難所では段ボールで寝床を作り、市販の仮設トイレを組み立てた。同校の井上誠教諭(41)は「生徒は卒業すると全国に散らばる。その場所で災害が起これば、若い彼らが中心となって対処しなければならない。得難い経験になったはずです」と捉えている。

 こうした教育旅行は〇五年に始め、これまで約二千三百人の児童生徒が参加。実施の中心となっている観光協会の佐野由裕事務次長(36)は「自分たちの経験を若い人たちに伝えたい。災害に備える意識を持ってほしい。実際にそれが生死を分ける」と強調している。

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 北海道南西沖地震は、1993年7月12日午後10時17分に発生。マグニチュード(M)7・8。奥尻島の推定震度6。死者・行方不明者は道内と青森県で計230人。奥尻島には海抜20メートル超の津波が押し寄せ、火災も発生。死者・行方不明者は198人に上った。

<記者メモ> 「青苗は消えた」「○○君が死んだ」。南西沖地震から8カ月後に青苗小学校が発行した作文集を、初めて読んだ。率直すぎる言葉が並び、やりきれない気持ちになる。同様の思いをさせないために、教訓を伝え続けなければならない。 (北海道新聞・日栄隆使)

ほのかな明かりを携え、被災地への祈りを込めた歌を披露した出演者=3日、仙台市宮城野区文化センターで

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<河北新報>仙台 被災証言朗読 草の根伝承

 東日本大震災で関連死を含め約九百三十人が犠牲になった仙台市で、草の根の震災伝承が続いている。

 津波被災した住民の体験記をステージで読む「朗読のつどい」。二〇一三年に始まり、毎年三月に開く。あの日を思い起こし「同じ犠牲を繰り返さない」と誓う被災地発の取り組みだ。

 六回目を迎える今年は、三日に宮城野区文化センターで実施し、、地元の主婦ら十三人が一編ずつ計十三編を読み上げた。乗っていた車ごと真っ黒い濁流にのまれ「もう駄目だ」と死を覚悟した話。避難先の体育館で津波に襲われ、曽祖母を亡くした悲しみ。迫る火災の恐怖と寒さに震えた夜…。生々しい証言と修羅場を生き抜いた教訓をギター演奏などに乗せて伝えた。

 主催は、市宮城野地区婦人防火クラブ会員らでつくる「婦防みやぎの朗読会」。同クラブ港支部が発行した体験文集から引いて読む。「せっかくの貴重な記録も活用されなければ忘れられてしまう」。風化への危機感を原動力に毎週けいこを重ねてきた。

 宮城野区南蒲生地区の自宅が被災した佐藤美恵子さん(71)は、港支部長の時に仲間と文集を制作。「忘れられつつある当時の困難を振り返り、備えに生かしてほしい」との思いから、朗読会にも毎回出演する。

 「地域で暮らす住民の体験だからこそ胸を打つ」と朗読会会長の野田幸代さん(66)。「風化に抗(あらが)うためにも被災した一人一人の思いを紡ぎ、震災の記憶を後世につなげたい」と言う。

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 朗読会で読む手記の多くが、2013年発行の「東日本大震災の体験文集II」(計92編)に収録。仙台市宮城野区の被災住民らがつづった。連絡先は市宮城野地区婦人防火クラブ連絡協議会事務局の市宮城野消防署予防課=電022(284)9211

<記者メモ>  朗読会はさまざまな震災体験を共有する場だ。体験を数多く知ることで次代に残す教訓に説得力が生まれる。シンプルで地道な取り組みだが、震災の教訓を伝承する出発点ともいえる。体験の分かち合いがもたらす力を信じたい。(河北新報社・藤田和彦)

      ◇

<311メディアネット> 河北新報社(仙台市)が展開する防災巡回ワークショップ「むすび塾」を共催した全国の地方紙など(地図参照)が参加。連携して防災機運を盛り上げようと、震災発生日前後に共通タイトルの特集や連載、番組を組んでいる。

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