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【首都圏】

<談論誘発>「居住支援」付き住まいを 制度のはざまか 防火の余裕なし

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◆高齢者住宅財団特別顧問・高橋紘士(たかはし・ひろし)氏

 一月三十一日深夜に発生した札幌市東区の共同住宅「そしあるハイム」火災。あらためて生活に困窮した人々の深刻な住まいの問題が明らかになった。

 今回の十一人の犠牲者の多くは高齢者だった。無届けの有料老人ホームは多く、施設整備の不足がこのような悲劇の背景にあるのではないかとの意見が、今も根強い。

 九年前、群馬県渋川市で起きた高齢者向け施設「静養ホームたまゆら」火災事件も同様である。これまでの住宅が住みづらく、転居先が見つからない低所得の高齢者が福祉事務所等の紹介でゆかりのない無届け「施設」を紹介されて十人が犠牲になった。この時も、高齢者向け施設の不足が指摘され、行政の責任を批判する声が高かった。

 実は「介護施設」に入所するほどでもない人たちが住む場所の確保は窮しているとされる。「施設」に入所してしまうと、生活機能が悪化することがある。施設は入所者を選別して“似たもの”を集める場で、多くの施設では自立心を損なう相部屋が残存している。個室では相当な自己負担が必要で、低所得者には入所しづらいのが現状だ。

 「そしあるハイム」は、高齢者だけではなく、四十代の男性も犠牲になった。札幌市も届け出義務のある有料老人ホームと認めていなかった。入居者の助け合いや地域から支援も存在し、「貧困ビジネス」とは一線を画した、互助のある住まいの場であったようだ。

 財政基盤の弱い民間の善意に頼った結果、老朽化した住居しか確保できないのがほとんどである。このような共同の住まいには、公的な支援や民間からの支援が不足し、綱渡りのような運営を強いられているのである。

 昨年十月、改正住宅セーフティーネット法が公布され、住宅確保が必要な人々に「一戸建て住宅」の空き家の活用や民間賃貸住宅を借りやすくする施策が導入され、併せて居住確保や生活支援などの居住支援を担う法人の指定制度が創設された。

 国会に上程中の生活困窮者自立支援法の改正では、孤立等による生活困窮の恐れのある人々に居住支援を提供するという法改正を予定し、住宅セーフティーネット制度の活用を前提としている。

 重要なのは課題が発生する現場を預かる地方自治体がこの制度改正を積極的に活用し、制度にある居住支援協議会を機能させ、民間事業者や地域住民の協力も得て、先のような悲劇を繰り返さないよう「居住支援付き住まい」の普及に取り組むことである。

 1944年生まれ。立教大学院教授などを経て現職。地域包括ケア論、居住支援論専攻。4月から東京通信大学教授兼務。

<「そしあるハイム」(札幌市)と「静養ホームたまゆら」(渋川市)火災> 「そしあるハイム」の火災は1月31日、木造3階建て約400平方メートルを全焼。入所者のうち80代3人、70代4人、60代3人、40代1人が死亡。生活困窮者の自立支援に取り組む会社が運営。一方、「たまゆら」の火災は2009年3月19日発生。高齢者10人が死亡。うち6人は東京都墨田区の生活保護受給者。前橋地裁は「館内禁煙とは名ばかり。たばこを原因とする火災発生の予見可能性があり、火災報知機を付けるべき注意義務があった」と施設の元理事長に有罪判決を言い渡した。

 

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