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【首都圏】

進む高齢化 孤立を危惧 都内でシンポ チェルノブイリ現地ガイドが語る

帰還困難区域のゲート前で、福島とチェルノブイリの現状について語るセルゲイ氏=福島県富岡町で

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 原発事故の被災地の今後を考えるシンポジウムが東京都内で開かれ、福島県浪江町の町議と、旧ソ連・ウクライナから来日したチェルノブイリの現地ガイドが登壇した。浮き彫りになったのは、被災地が共通して直面する「住民の高齢化」だった。 (小川慎一)

 チェルノブイリでは「ゾーン」と呼ばれる原発から三十キロ圏の立ち入り禁止地域に、約二千人が違法と知りながら戻った。だが、事故から三十年以上がたちゾーンの住民は約百三十人になった。高齢化が進む。

 ゾーンのガイドをするフランチュク・セルゲイさん(57)は「十年前にウクライナ政府が支援を打ち切った。病院も診療所も近隣にはなく、最も近くて数十キロ離れたゾーン外にしかない」と報告。一人暮らしの高齢者が多く、倒れても気づかれないことすらあるという。

 昨年三月末に避難指示が一部解除された浪江町は、今年三月一日時点で実際に住んでいるのは五百十六人。住民登録者全体に占める割合はわずか3%で、六十五歳以上の高齢者が占める割合は43%と高い。

 浪江町議の馬場績(いさお)さんは、政府と町が住民帰還を推し進め、県外避難者向けの支援策の予算を減らしていると批判。避難指示解除一年で賠償も打ち切られるため「被災者の生活再建が遅れている。これでは、ますます避難者が孤立していってしまう」と話した。

 シンポジウムは三月二十四日、東京都大田区の東京工科大で開かれた。日本衛生学会学術総会の市民公開講座として、福島とチェルノブイリで住民らの被ばく調査を続けている独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)が企画した。福島県二本松市の東和地区で、環境や食品の放射能測定を続ける大槻純子さんも活動を報告した。

◆「チェルノブイリより線量高い」 被災地歩く「事故リアルに感じる」

 シンポジウムを前に、セルゲイさんと福島第一原発の近くを通る国道6号を、福島県南相馬市からいわき市まで南下した。

 津波被害の復旧現場に向かうダンプカーの列を抜けると、路上の表示器が毎時2マイクロシーベルトの放射線量を示していた。国の除染の長期目標の10倍。「チェルノブイリのゾーン(立ち入り禁止区域)より線量が高い」と、セルゲイさんがつぶやいた。

 左手に、原発の排気筒と、廃炉作業のため林立するクレーンが見えた。セルゲイさんは「ゆっくり!」と声を上げ、黙り込み、車窓に額をくっつけて見入った。大熊町の帰還困難区域では事故から7年後も、道沿いの家々にバリケード。「原発事故が起きたことを、リアルに感じる」

 富岡町の帰還困難区域を仕切るゲートの前で、つぼみの固い桜並木を見上げた。避難指示が解除された所と、されていない所が、道一本で分けられている。

 「ゾーンの仕切りを思い出させる光景だ。チェルノブイリでも、放射線量が低い所に帰ることを許していれば、多くの人が帰っていたかもしれない。ただ、若い人は、その限りではないだろう」

 福島では避難指示が解除された所でも、帰った住民はわずか。それも、高齢者が中心。「ゾーンでは、帰った高齢者への支援がなくなり、国から捨てられたのと同じ。日本は素晴らしい国だから、まさか同じことは起こらないよな」

 夕刻、いわき市内にある仮設住宅を訪ねた。ほとんどが空き家で、人影はなく、辺りが暗くなっていく。「新たな家を確保できなかったら、放射能汚染が心配な所に、住民は帰らないといけないのか?」と驚きを隠さなかった。 (大野孝志)

 

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