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【首都圏】

よみがえる捕虜たちの旋律 「第9」国内初演100年に合わせ披露

安藤由布樹さん(左)の指導で、「閉じておくれ僕の眼を」を練習するメンバー=東京都中央区築地で

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 第一次世界大戦さなかの百一年前、千葉県習志野市にあった捕虜収容所でドイツ兵が作った曲が編曲され、六月に東京・渋谷で開かれる「第九演奏会」で披露される。この時期に国内各地に開設された収容所などでは、捕虜たちが日本にベートーベンの交響曲第九番やバウムクーヘンなど、さまざまなドイツ文化を伝えたとされる。国内での第九演奏は今年でちょうど百周年となり、演奏会では第九とともに、百年の歳月を経た曲をよみがえらせる。 (保母哲)

 編曲したのは、作曲家で合唱指揮者の安藤由布樹(ゆうき)さん(56)。安藤さんは海外でも音楽会を開くなど活躍している。「戦時中の捕虜収容所といった過酷な状況の中でも、音楽家や芸術家が活動していた。その足跡を調べたい」と、ユダヤ人迫害の象徴でもあるポーランド・アウシュビッツ収容所に収容された音楽家の楽譜を十年ほど前、復元もした。

 習志野市にあった「習志野俘虜(ふりょ)収容所」のことを知ろうと昨年八月、同市などの音楽家グループが市内で開いた演奏会を鑑賞。同収容所で暮らした作曲家のハンス・ミリエス(一八八三〜一九五七年)が紹介され、一九一七年に作曲した曲「閉じておくれ 僕の眼(まなこ)を」が披露されたことに感動したという。

 安藤さんは、音楽家グループの戸田志香(ゆきこ)さん=習志野市=から楽譜を送ってもらい、編曲。「百年ほど前に日本で生まれた曲。その楽譜が、ドイツの遺族の手に残っていたのは奇跡としか言いようがない」と話す。戸田さんも「習志野市民の多くは、収容所があったことを知らない。この曲とともに収容所に関心を持つ人が増えれば」と期待している。

 六月一日は「ベートーベン第九交響曲 日本初演100周年記念演奏会」と題し、午後七時から渋谷区立文化総合センター大和田で開かれる。出演するのは、関東各地などの合唱団体のメンバーら延べ約百七十人。第九の独唱や混声合唱などに続き、「収容所にいた兵士は男性だったから」と、フィナーレでは男性約七十人が「閉じておくれ 僕の眼を」を披露することにしている。

 公演の問い合わせは、安藤さん=電090(8113)0942=へ。

<習志野俘虜収容所> 中国・青島で捕虜となったドイツ兵らを1915年から20年にかけ、千葉県習志野市内で収容した施設。多いときには約1000人がいた。捕虜たちには音楽活動が認められており、オーケストラが結成され、バイオリンの工房も開設された。初代所長は西郷隆盛の長男である西郷寅太郎。

 

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