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【首都圏】

<談論誘発>官民連携の方向性実証 ふるさと納税で実現「こども宅食」増やす

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◆文京区長・成沢広修(なりさわ・ひろのぶ)氏

 文京区は昨年十月、子どもの貧困対策として「こども宅食」というプロジェクトを開始した。子育て中の生活困窮世帯を対象に企業やフードバンクなどから寄せられた食品等を直接自宅まで届ける事業だ。運営経費は「ふるさと納税」を活用、全国から寄付を募った。当初二千万円を見込んでいたが、八千万円を超える善意が寄せられた。

 昨年度のふるさと納税による区の持ち出しは、約十億円に上ったが、金額の多寡でなく返礼品無しでも寄付をしてくれた善意の重みを大切にしたい。今回の取り組みはふるさと納税の現状に一石を投じたといえよう。 

 自治体が寄付金の使途を明確にして資金調達する「ガバメントクラウドファンディング」(GCF)の成功例として「こども宅食」は取り上げられることが多いが、本質は別のところにある。

 社会や地域課題の解決のため行政や企業、NPOなどがそれぞれの強みを生かした主体性を保ちつつ、組織の壁を越えてイコールパートナーシップ(対等な関係で協力)のもと、目的のためにコンソーシアム(共同事業体)を形成して事に当たる「コレクティブ・インパクト」の手法を活用している点だ。

 これまでの自治体における官民連携は、指定管理者制度に代表される民間委託が中心で、民間活力の活用と公的責任の相反性が常に指摘されてきた。この議論を乗り越えたのが「コレクティブ・インパクト」の仕組みだ。

 ふるさと納税は活用していないものの、同様の仕組みで所得格差が教育格差につながらないよう塾代を補助する「スタディクーポン」という事業が渋谷区で始まった。

 経団連の新会長に就任予定の中西宏明氏(日立製作所会長)は、記者会見などで国連が定めた「持続可能な開発目標」(SDGs)に基づく経営が今後の経済活動で重要になると強調。昨年十一月には経団連の「企業行動憲章」が改定され、企業の社会的責任(CSR)や法令順守にとどまらず、事業活動そのものを通じて社会的課題の解決に貢献していく方向性を示した意味は大きい。

 日本の年金積立金管理運用独立行政法人が運用先を選ぶ指標として「ESG(環境・社会)投資」を採用したのも追い風だ。人材不足が指摘されている現状において、これらに配慮しない企業はブラックの烙印(らくいん)を押されよう。さまざまな技術開発やノウハウを地域や社会的課題の解決に向けて取り組む新しい官民連携の方向性を「こども宅食」が実証したと考えている。

 1966年生まれ。現在3期目。長男の誕生を機に首長で初めて育児休暇を取得し話題となった。

<文京区こども宅食> 生活保護世帯を除く児童扶養手当受給世帯(約700世帯)・就学援助受給者(約1000人)を対象に、2カ月に1回程度、米などの食品や清涼飲料水等を届ける。区は昨年7月NPOなどとともに「ふるさと納税」による寄付を募集、わずか1カ月余りで目標額2000万円を超える寄付が集まった。これを受け昨年10月に区内150世帯への宅食が開始。申し込みは予想を上回る458世帯に上り、抽選に外れて食料を受け取れない世帯が出ていた。本年度は申し込み世帯全員に配送を拡大。さらに新規申し込みに備え配送先を600世帯に増やす。

 

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