東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 首都圏 > 記事一覧 > 4月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【首都圏】

<談論誘発>大都会の“過疎地”超高層の人と生活 連携し「自立した街」を

写真

◆富士通総研上級研究員・上田遼(うえだ・りょう)氏

 今月、日本で初めて百メートルを超えた超高層ビル「霞が関ビルディング」が五十周年を迎えた。私は十年前、超高層建築に携わる建設会社の構造設計部におり、幸運にも鋼の骨組みと対面。長年建物を支えてきた威厳があり、歴史を静かに語っていた。そして、今もなお、高さ百五十メートルの「雄姿」を見せている。

 東京には数百棟の超高層ビルが存在し“天空”に無数の人々が働き、暮らすようになった。一方で大災害の教訓から建物へ期待される物事は変わりつつある。耐震性に劣らず重要視されるようになったのは「人と生活」だ。

 東日本大震災では、東京も超高層建築の一部でエレベーターや水等が停止、利用や生活に支障が生じた。霞が関ビルディングは、エレベーターの耐震化を行うとともに、困窮しがちなトイレも、地下水を利用した「トイレ井戸」や水貯蓄により在館者全員の利用量に対応した。設備や事業継続のための電力も自給可能にした。

 東京の課題は、高度な発展の結果、建物、インフラ、設備、輸送など、あらゆる機能が相互に依存し合っていることである。モノが豊かでも機能や分野の「村」のつながりが弱ければ、それは逆説的に過疎地のリスクをはらむ。

 山間地域の限られた山道が断たれたことで孤立集落が発生した熊本地震のように、超高層ビルも限られた上下の流れを失えば「孤立」する可能性がある。適切な対策がなければ、林立する超高層は都市の「山岳地帯」である。

 これからは人やシステムの連携によって建物や空間を多機能に強化、それ自体で「自立した街」を創っていくべきである。そのためには、専門分化し、半ばブラックボックス化した耐震性能や設備の弱点、人の活動計画などを横断的に開示し、対話する必要があるが、組織や法律、言葉や意識の壁も多い。その中で東京駅周辺の「防災隣組」は超高層オーナーやインフラ、医師会、自治体などの多分野連携を試みている。

 江戸時代は「火事とけんかは江戸の華」と言われたほどで、火災に対して華やかな働きがあった。常に隣り合わせの災害を直視し、運命に向かってお互いを激励することが「粋」だったのだろう。

 昨秋、仙台市で開かれた「世界防災フォーラム」では、世界目標のもと「すべての人が取り組み、すべての人を守る」(マルチステークホルダー型防災)が日本伝統の“BOSAI”として英語で普遍化されたが、技術や政策、人が集まる東京が先駆けてその「対話」を始める時だ。

 1983年生まれ。建設会社等を経て現職。ICTを使った避難誘導など災害時の情報システムの研究開発。

<マルチステークホルダー型防災> 防災を国際的な取り組みとし、世界共通の目標とした「仙台防災枠組」が2015年3月14日から5日間、仙台市で開かれた「第3回国連防災世界会議」で合意、発効された。災害に関する全ての関係者(マルチステークホルダー)が役割を果たすことが求められ、4つの優先行動、つまり(1)災害リスクを理解する(2)適切なガバナンスを実施する(3)防災投資を推進する(4)応急対応準備と復興時の継続改善を行う−に基づき、被害減等に関する7つの具体的な目標が掲げられている。2030年までの目標達成を企図している。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報