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【首都圏】

<談論誘発>箸の素晴らしさ知って 世界に誇れるシンプルな道具

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◆「国際箸学会」会長・小宮山栄(こみやま・さかえ)氏

 私は、昭和を「体験」した人間である。だからベッドより畳、靴と靴下より、げたと足袋、フォークやスプーンより箸の方が好きだ。

 神様は人間に「道具をつくることができる手」、鳥には「違う環境に自由に移動できる羽」を与えた。飛べる代わりに手がない鳥たちは、食べるために必死にくちばしを変化させていったのではないだろうか。「挟む、運ぶ、突き刺す」など、くちばしには多様な機能がある。箸もたった二本の棒だけのシンプルな道具だが、くちばしのように多様な機能を持つ。

 箸は、日本人にとって、幼児のころから天寿を全うするまで当たり前のように使う道具だが、食事用以外の箸も含め、くちばしから学び続けると面白い。私はモノづくり歴五十年。日本人がモノづくりを得意とするのは、箸のおかげと思っている。

 「日本人の繊細で知的レベルの高い国民性は、まさに手先、指先を器用に使う箸中心の食生活から誕生したものといって過言でない。これが現代社会に突出した先端技術を生み出すルーツだった」と指摘した学者もいる。

 モノづくりの世界ではいくら理屈が言えても、現実に手でつくることができなければ役立たずだろう。そういった意味で箸は世界に誇れる日本文化。古事記にも登場し、今も神事に使われている。単純だが素晴らしい機能を持っているこの二本のシンプルな道具に、私は興味を持ち、さらに共通の話題がつくれ、共に喜びを味わうことができると確信し、仲間と国際箸学会をつくった。 

 世界中の人に箸に興味を持ってもらい、箸に慣れ親しむ方法はないかと学会で考案したのが「箸ピー」。これは「殻付きピーナツを箸を使って一分間に何個移動できるか」という単純なゲーム。

 老若男女がすぐに「緊張感と達成感」を味わえるのもこのゲームのメリット。もちろん小学生もすぐにできるが、「おばあさんの原宿」こと東京・巣鴨では、九十歳以上の人が悔しがりながら本気でチャレンジしている。

 いまや米国のシアトルやカンボジア、カナダの北部にある「イヌイットの村」でも、子どもたちが笑顔で競技を体験してくれている。「箸ピー」は共通の話題となり、世界で出会いがある。

 人生は出会いから始まる。われわれは母と父との出会いによって生まれた。子どもたちが日本文化の素晴らしさを感じ、世界に自信を持って生きることが大切である。きょう五日は「こどもの日」、改めてそう思った。

 1940年生まれ。大手企業勤務や看板業を経て、業務用ミラー会社「コミー」を設立、現在社長。

<国際箸学会> 2006年11月に設立され、事務局は国際箸会館(埼玉県川口市)内。16年11月には一般社団法人となった。「箸文化を学び、新しい箸文化を創り、箸を通して世界中の人とともに喜ぶ」のが学会の目的。会員は企業経営者や学者、会社員ら約200人。活動は小学校などで箸の歴史や箸づかいなどを教える「出前授業」など。箸に親しんでもらうため学会が考えた「箸ピー」も披露。これは1人でも、数人でも、集団でもできる。現在「箸技」や「箸重量挙げ」も開発中。箸文化を探るため、毎年「私と箸」をテーマにしたエッセーも募集。

 

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