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【首都圏】

<談論誘発>神社側と協議し人々が集う森に 筑波山の自然を守ろう

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◆NPO「地球の緑を育てる会」理事長・石村章子(いしむら・あやこ)氏

 茨城県の「筑波山」(標高八七七メートル)。頂上部にブナ林、中腹部にはアカガシ群、その他スダジイ、ウラジロガシ、アオキ等の常緑広葉樹、ヤマザクラ、コナラ等の落葉広葉樹、針葉樹等が混在。生態学的にも貴重で国定公園に指定されている。

 山の南面中腹に拝殿が位置する筑波山神社は三百七十五ヘクタールという広大な神社林を有し、スギ、ヒノキ、マツの人工林帯もある。全国的には第二次世界大戦後、国策として全国に植えられた針葉樹が安価な外材に押されて手入れが行き届いていないのが現状だ。

 私たちは、同神社との協議で、二〇〇六年から手付かずの針葉樹林内の広葉樹林化に取り組んでいる。針葉樹を間伐、繁茂するアズマネザサなどを除去、間伐材や散在する「筑波石」などを土留めに活用、段々畑ならぬ段々植林状態に造成する。

 健全な生育の樹木を残し、その間を耕起、ボランティアがこの地の生態系にかなったカシ、シイ、ウラジロガシ、コナラ、ヤマザクラ、シロダモ、ユズリハなどの広葉樹を植える。使用する苗は筑波山や周辺で収集したドングリを当会農場で管理育成、間伐材の葉は植樹後のマルチングに使用するなど全ての工程を人力と自然資材の活用で行う。

 この十二年間で、造成と植樹で約六千人のボランティアが入山、約一万八千平方メートルに約四万本の植樹を行った。苗は、健全な針広混交林として生育、環境防災林、水源かん養林、地球温暖化防止、山林美化などの役目を果たしている。

 造成工程で大量の間伐材や小枝が出るが、この自然の資材を活用できたらと願っている。「おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川に洗濯に…」の民話が作業中に自然と脳裏に浮かんでくる。

 丸太は土留めに使用、それでも余る丸太や大量の枝は、複数箇所に整理してまとめて置くしかない。もし、ここに索道があれば、運び下ろして薪、炭、小物用木工加工、肥料への転換等が可能で、「育てる」「植える」「切る」「使う」の樹木の循環が成立する。「この便利な時代に何を…」と言われそうだが、各地にこの循環が広がれば、林業活性の一助になるのではないだろうか。

 同県桜川市羽鳥地区の筑波山鬼ケ作国有林に全国緑化行事発祥の地の記念碑がある。全国の主立った山々がハゲ山だったことを憂えた昭和初期。当時の林業関係者が第一回の植林を行った所だ。国土保全に寄せる先人の努力や精神を新たな形で実践、発信できたら幸いと思う。

 1943年大連生まれ。英語講師、中国砂漠緑化団体の事務局長を経て、2001年に「地球の緑を育てる会」設立。

<筑波山> 富士山と対比され、昔から「西の富士、東の筑波」と称される。日本百景の一つでもある。朝・夕に山肌の色を変えるところから「紫峰」とも呼ばれている。西側の男体山(標高871メートル)と東側の女体山(同877メートル)からなる。山中には1000種類以上の植物が群生しており、植物研究の宝庫。登山やハイキングなど年間を通じて自然を楽しめる。山中には巨石、奇石、名石など数多く散在しており、それぞれに名前が付けられている。多くの伝説を生み、山そのものが神域とあがめられ、万葉の時代から「神宿る御山」として慕われている。

 

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