東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 首都圏 > 記事一覧 > 5月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【首都圏】

<談論誘発>松の枯死目立つ真壁町羽鳥地区 小鳥のさえずりもない

写真

◆フリーライター・大山茂(おおやま・しげる)氏

 筑波山は日本百名山の一つで関東の名峰でもある。茨城県つくば市の統計では、筑波山への観光客は二〇〇五年のつくばエクスプレス(TX)開業時に年間約三百万人だったが、その後は二百万人台を推移。市は昨年第二次観光基本計画を策定、観光客誘致に本腰を入れたが、その一方で森林荒廃が進んでいる。

 森林荒廃は地主不在やヒノキなど人工林の産業力低下による放置が原因だが、荒廃が最も著しい桜川市真壁町羽鳥地区の場合は、体長一ミリにも満たないマツノザイセンチュウの仕業。市によると、管轄の七五〇〇ヘクタールの森林のうち松林は三〇〇ヘクタールを占めるが、その全てが枯死している。

 市はセンチュウを宿すマダラカミキリムシを駆除するため二〇〇五年から空から殺虫剤をまくなど対策を講じてきたが、県の天然記念物・不動松並木(つくば市谷田部)が消滅したように、センチュウには太刀打ちできなかった。

 羽鳥地区の山道を上ると、かつての「松林隧道(ずいどう)」は白く焼けただれたように松の表皮がはがれ、まるで亡霊のよう。小鳥のさえずりさえも聞こえず、生命の息吹は感じられない。先日、この「談論誘発」で触れられていた全国緑化行事発祥の地の記念碑はこの地にある。その麓の山林が荒廃しているのは皮肉としか言いようがない。

 筑波山は「歌垣(かがい)」の聖地。万葉集にも多くの恋歌が登場する歴史とロマンを秘めた山でもある。歌垣は奈良時代の常陸風土記に出てくる男女の夜会で、夜通し歌をかけあい踊って遊んだ。これを彷彿(ほうふつ)させるのが地元に残る「歌姫(うたづめ)明神」だ。平将門の正妻君御前は近くの大和出身。もしかしたら歌垣が出会いだったかもしれない。

 また羽鳥は筑波山の男体山とをつなぐ霊道「筑波古道」の出発点。古道の稜線(りょうせん)には将門の伯父良兼の館跡も。表筑波山道が整備される江戸期のはるか前は、水車や機織りの音が響く門前町だった。

 こうした歴史的に由緒ある羽鳥周辺に対しては、桜川市も樹木を守る民間の活動に「身近なみどり整備推進事業」などの制度を適用し、作業道の整備や間伐の支援をしたいとしている。そのバックボーンとなるのが、二〇二四年度から導入される「森林環境税」だ。

 東京・秋葉原とつくば市を結ぶTX車内には「筑波山周遊券」のポスターが張られ、霊山やパワースポットの場として観光客の呼び込みを図るが、一方で大切な自然を後世にどう残していくか、官民で取り組まなければならない時期にきている。

 1951年生まれ。茨城新聞記者を経て、日本農業新聞茨城通信員。広葉樹「イペー」の栽培・普及に取り組む。

<筑波山の自然・石村章子氏(NPO地球の緑を育てる会理事長)の意見要約>

 (1)筑波山神社との協議で2006年から手付かずの針葉樹林内の広葉樹林化に取り組んでいる。12年間で造成と植林で約6000人のボランティアが入山、約1万8000平方メートルに約4万本の植樹を行った。

 (2)造成工程で大量の間伐材や小枝が出るが、この資材を活用できたら。丸太は土留めに使用、余るものは複数箇所に整理してまとめて置くしかない。

 (3)ここに索道があれば、運び下ろして薪、炭、小物用木工加工、肥料への転換等が可能で、この循環が広がれば林業活性化の一助になるのではないだろうか。 (5月12日付)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報