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【首都圏】

<談論誘発>復活の動きある地方議員の年金 議員なり手不足解消せず

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◆地方自治総合研究所主任研究員・今井照(いまい・あきら)氏

 五月二十七日投票の群馬県高山村議会議員の補欠選挙は定数二のところ一人の立候補者しかなく、無投票になったばかりか、引き続き欠員が生じることになった。無投票になると、有権者にとっては投票の機会を失い、当選した議員も「選ばれた」という実感が伴わない。大きな問題であることは間違いない。

 政府与党はいま「議員のなり手不足」を理由に、議員年金を復活させようとしているが、仮に議員年金が復活しても「議員のなり手不足」は解消されないだろう。それとこれとは別の話だからだ。

 こうした無投票当選者数の割合は近年、必ずしも増えているわけではない。一九九〇年代に入ってからは改選定数の約二割の水準を前後している。議員年金廃止の影響はない。関東地方では四、五月で十六の市町村議選が行われたが、無投票になった事例はない。高山村のように補欠選挙でいくつかあるだけだ。

 全国的にみると、無投票当選者数の割合は、市町村議会ばかりではなく、都道府県議会も同じように高い。しかし都道府県議を「なり手不足」とは言わない。都道府県議の報酬は、月額平均約八十三万円、市議約四十三万円、町村議約二十二万円。これだけ処遇に差があるものをひとくくりにして、「議員のなり手不足を解消するために議員年金を復活させる」という理屈には無理が多い。ますます処遇の差が開くだけだろう。

 与党が考えている議員年金案は、自治体の議員を役所の職員とみなして、厚生年金制度に組み込むという。そこで問題なのは、果たして議員は職業なのか、ということだ。日本年金機構の説明書によれば、事業所に常時使用される人が厚生年金に加入することになっている。議員は誰に「使用される人」なのか。それは「常時」なのか。

 規範的に言えば、議員は市民に「使用される人」であるが、制度的には、議長に使用されているわけでもなく、まして市町村長・知事に使用される人でもない。言い換えると、議員が「常時」勤務していることを「使用者」として誰が日々確認するのか。そもそも、どこからどこまでを議員の職業としての「公務」とみなすのか。

 このように考えると、議員の「使用者」は見当たらない。議員の仕事はそういう性格のものではないからだ。もしそうだとすると、現在の制度では自営業者と同じように国民年金に加入するのが筋。もし、国民年金では老後の生活が十分ではないというのであれば、国民年金制度を改革するのが先決ではないか。

 1953年生まれ。昨年3月まで福島大学行政政策学類教授。主著は、「地方自治講義」「自治体再建」(いずれも、ちくま新書)。

<議員年金> 国会議員と地方議員には、かつて独自の年金制度があったが、国会議員は2006年4月に廃止。他の年金と二重に受け取れることや、当時としては短期間で受給資格を取得することなどが、議員特権と批判されたためだ。手続き漏れなどによる政治家の年金未納問題も影響した。一方、地方議員年金も11年6月に廃止された。市町村合併や議員定数削減で、掛け金を支払う議員数が激減したため制度を維持できなくなったことが主因だ。現在政府与党は地方議員年金の復活を進めようとしているが、自民党の若手議員からも異論が出ている。

 

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