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【首都圏】

江戸の循環農業継承 埼玉の「三富新田」舞台 記録映画、横浜で上映中

市民が参加する「ヤマ」の落ち葉掃き(映画「武蔵野」製作委員会提供)

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 雑木林の落ち葉を堆肥にして畑に還元する江戸時代の循環農業の伝統を受け継ぐ埼玉県の「三富新田(さんとめしんでん)」を描いたドキュメンタリー映画「武蔵野」が、横浜市内で上映されている。原村政樹監督(61)は「科学信仰と消費優先社会のいま、映画を通して自然と共生する知恵や暮らし方に目を向けてほしい」と話す。

 「ヤマが三富新田の豊かな大地を支えている」。原村監督は取材中に「ヤマ」という言葉を繰り返した。

 武蔵野台地にある平地林でコナラやクヌギの雑木林のことだ。約三百六十年前、当時の川越藩主が未開墾の台地を開拓。短冊形の五町歩(約五ヘクタール)に区割りして入植者に与え、誕生した三村が三富新田に。現在の所沢市から三芳町、川越市などにまたがる。

 関東周辺の山々の大量の火山灰でできた関東ローム層はやせた原野だ。藩は畑の開墾時、雑木林を育てることを勧めた。農家は苗木を植えて育て、落ち葉をかき集めて堆肥化したという。

 原村監督は農業をテーマに記録映画に取り組む。川越市に四十年以上住み、二〇一三年にNHK番組で江戸の循環農業を紹介。その後、多くの支援者を募る製作委員会で三年をかけて「武蔵野」を完成させた。

 映画は家族農業の後継者、ヤマの保全に関わる市民、伐採木から家具を作る工芸家らの仕事や暮らしに迫り彼らの思いを伝える。ヤマが織りなす四季の美しい映像には癒やされる。女優の小林綾子さんがナレーションを担当した。

 江戸の伝統農法でサツマイモを作り続ける伊東蔵衛(くらえ)さんが「先祖があって今がある。俺は『農業は百年一日(ひゃくねんいちじつ)のごとし』というおやじの言葉を守っているだけ」と語る場面は胸に響く。原村監督は「この映画が武蔵野が誇るヤマをこれから三百年後に残すための力になれたらいい」と話す。

 上映は横浜シネマリン(横浜市中区)が七月六日まで、深谷シネマ(埼玉県深谷市)は同十五日〜二十一日(十七日休館)。両館とも午前十時から。 (野呂法夫)

 

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