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【首都圏】

<中野優理香のJAXAフライトディレクタ通信> 緊急事態、史上初アンモニア警報

ISSの米国実験棟「ディスティニー」で心肺蘇生法訓練をする大西卓哉宇宙飛行士。あらゆる事態に備えなければならない(JAXA/NASA提供)

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 国際宇宙ステーション(ISS)の歴史上、初めて「アンモニア(=毒ガス)の漏えい」が検知され、警報が出たことがありました。

 火災、急減圧(空気漏れ)と同じレベルの命にかかわるEmergency(緊急事態)。今でも忘れられない二〇一五年一月十四日のことです。

 普段通りシフトに入っていると、管制室前方大画面に大量の警報が発生しました。画面は赤や黄色の警報で埋め尽くされ、日本に限らずヒューストンの管制室も大きくざわつきました。

 ただちにISS内の宇宙飛行士に対してガスマスクを着け、警報の出ていないロシア側のモジュールから、ソユーズ宇宙船に逃げてドアを閉め隔離する指示が出されました。

 アンモニアはISS上で生まれる大量の熱を逃がす、排熱に必要な液体です。

 生活空間内は水で冷却しており、アンモニアは船外でしか使用されていませんが、熱交換をしているためアンモニアと水が触れている熱交換機があります。ここからアンモニアが船内に漏れたというケースは十分に考えられます。

 アンモニアは「きぼう」の重要な機器を冷却していたため、「きぼう」の内部電源半分を遮断する必要がありました。実験を行う「きぼう」にとって、被害の大きい不具合です。

 全員が宇宙飛行士を守るために一致団結し、さらに「きぼう」内部の機器を守るために機器の安全化を役割分担しながら行いました。

 そして宇宙飛行士を退避させ、上流電源を落とす時間内に、全ての機器安全化が完了したのです。

 結局、アンモニア漏えいの検知は誤検知だと判明し、宇宙飛行士の健康にも「きぼう」の機器にも影響はありませんでした。

 あの時のチームとしての一体感は今でも忘れられません。

 (「JAXAフライトディレクタ通信」は随時掲載します)

<なかの・ゆりか> 宇都宮市出身。宇都宮市立御幸小学校、慶応義塾湘南藤沢中・高等部を経て慶応大理工学部卒業。2012年4月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)入社。14年8月から国際宇宙ステーション(ISS)にある日本の実験棟「きぼう」のフライトディレクタ。17年11月から宇宙ステーション補給機「こうのとり」のフライトディレクタの訓練を始める。

 

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