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【首都圏】

<談論誘発>五輪の先に重い現実が 老いていく首都圏 深刻な2025年問題

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◆東京新聞編集委員・長竹孝夫(ながたけ・たかお)

 「2011年3月11日」

 だれもが忘れない東日本大震災が起きた日である。この年の一月からスタートした首都圏オピニオンコーナー「談論誘発」。東日本大震災では建物倒壊、避難者、液状化などさまざまなテーマ、原発事故では放射能汚染問題…。各自治体が抱える課題なども取り上げ、これまでに登場した専門家らは四百三十人。

 コンセプトは「首都圏の現状と課題」で、事例や現場の声は地域に特化した。弊紙のエリアが首都圏を中心としているからである。

 やはり、思い出深いのは大震災関連。3・11以降、一年間は復興を念頭に諸問題をクローズアップ。研究者のほか被災関係者なども登場した。できるだけ早く復興するにはどうしたらよいか。ざっくばらんに論じてもらった。

 そして、原発事故はなぜ起きたのか。なぜ防げなかったのか。中でも栃木県佐野市の「田中正造大学」の坂原辰男事務局長が「足尾鉱毒事件と原発事故は共通する」と主張したのを忘れない。

 明治時代、足尾銅山から流れ出た鉱毒で渡良瀬川流域の稲や桑などが枯れ、住民の一部は北海道などに移住した。富国強兵に進む日本にとって当時銅は重要産業。正造は奔走し、政府や事業関係者に厳しく迫った。一方の原発事故も同じ国策で被害も類似。鉱毒事件の延長といえる。

 「百年の悔(くい)を子孫に傳(つた)ふるなかれ」。正造はそう書き残した。この思想は発信し続けなければならないだろう。かつて東大で自主講座「公害原論」を主催した宇井純氏(故人)は「地域を捉えようとすると必ず大きなものにぶつかる。しかし、その大きなものは、小さいところをみないと見えてこない」と言った。

 談論誘発は、身近なテーマも取り上げてきた。水道管などのインフラ老朽化、災害時の帰宅困難、高齢ドライバー、医師や看護師、介護ベッドの不足、高齢者見守り、ダブルケア…等々。社会の負の一面も浮き彫りにした。

 ある意味、これは「二〇二五年問題」につながる。

 一九六四年開催の東京五輪の時は、交通網が広がり、地方から若い労働力が流入して街は大きく膨らんだ。二〇年の東京五輪はハード、ソフト両面で、いま準備に余念がないが、どのような大会になるのだろうか。その五年後には「老いた東京」「縮む東京」という課題を抱える。

 団塊の世代が七十五歳以上の後期高齢者となり、要介護高齢者は首都圏で今より30%増の約二百三十四万人とされる。特に東京は約七十三万人と深刻である。介護難民や孤独死も増えるだろう。

 厳しい財政・少子化のなかでどう乗り切るのか。首都直下地震は三十年以内に70%の確率で来るという。老いつつある街の足腰をいかに強めるか。今こそ「超高齢時代」を見据えて、成熟への知恵を出さないといけない。

 1953年生まれ。東京本社社会部、特別報道部、前橋支局長、社会部次長兼論説委員、校閲部長など経て現職。

    ◇   ◇

 談論誘発は、今回が最終です。私たちの街が少しでも住みやすくなるにはどうしたらよいか。その思いで、多くの筆者とテーマや内容について調整し、読者からも貴重な声を頂戴しました。この場を借りて感謝申し上げます。

 

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