東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 首都圏 > 記事一覧 > 7月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【首都圏】

経験者が短編映画「理解広げたい」 養護施設 退所後の現実

短編映画を製作した西坂来人さん=東京都新宿区で

写真

 小学生の一時期、児童養護施設で生活した映像作家の西坂来人(らいと)さん(32)=東京都狛江市=が、施設退所後の若者たちを描いた短編映画「レイルロード スイッチ」(二十分)を製作した。 

 施設で育ったお笑い芸人が主人公だ。下積みの現実に直面しているとき、施設で同じ時を過ごした仲間たちと再会する。

 施設での生活は原則、十八歳になり高校を卒業するまで。親の虐待などから、自活せざるを得ないケースは少なくない。映画はその厳しい現実を直接的には訴えていない。西坂さんは「だれが見ても楽しめて、観賞後に背景にある問題に関心を持ってほしいから」と明かす。

ネットで無料公開されている短編映画「レイルロードスイッチ」の公式ホームページ

写真

 西坂さんは両親の間のトラブルのため、小学五、六年生時代を福島県相馬市の施設で過ごした。その後、福島市で母親、弟や妹と暮らした。高校卒業後、映画製作に携わりたいと上京、専門学校で学んだ。西東京市民映画祭で初めて監督をした短編が優秀賞に選ばれるなどし、映像作家や子どものころから好きだった絵本の作家として活動してきた。

 施設時代、将来に不安を覚えていたという西坂さんは「ずっと施設のことは気になっていた」。数年前から施設の子どもたちと絵本を創作したり、施設を出た若者をサポートするNPO法人に通ったり、社会的養護の勉強会に参加したりしてきた。「家族というバックボーンがなく、ちょっと失敗したら生活が破綻してしまう状況は、あまり変わっていない」など、現状の課題を再認識していった。

 昔いた施設の職員から先輩の男性の話を聞き、衝撃を受けた。男性は東京で行き倒れで亡くなり、持っていた連絡先は、その施設だけだった。「うわさなどで聞いていたけれど、身近で現実に問題が起きていて居ても立ってもいられなくなった」

 悲劇を防ぐには、社会的養護への理解を広げる必要があると考え、自分ができるのは映画での発信だと思った。脚本には施設で育った若者たちの意見も取り入れ、何度も書き直した。三月に撮影し、五月にネットで公開した。

 作品名は英語で鉄道線路の分岐器を意味し、少しでも世界を変えたいという思いを込めた。「退所した若者をサポートできる社会になったら、施設で生活している子どもたちも安心して社会に出て行ける」

     ◇

 ネットの公式ページ(「レイルロード スイッチ」で検索)で作品や上映・トークイベント日程を紹介。長編製作費の支援を募っている。 (飯田克志)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報