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【首都圏】

「裏の戦争」実相に迫る 女性2監督が「沖縄スパイ戦史」 28日から都内で上映 

米兵の捕虜になった少年兵=映画「沖縄スパイ戦史」より、(c)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会

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 自分たちが住む町や村が戦場になった時、軍隊は住民を守ってくれるのか? ゲリラ戦や謀略戦など「裏の戦争」を描いたドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」が28日から、東京都中野区のポレポレ東中野で上映される。 (土田修)

 監督は、いずれも元琉球朝日放送記者の三上智恵さんと大矢英代(はなよ)さんの二人。三上さんは映画「標的の村」(二〇一三年)で山形国際ドキュメンタリー映画祭の日本映画監督協会賞を受賞したほか、映画「戦場(いくさば)ぬ止(とぅどぅ)み」(一五年)でも高い評価を受けた。大矢さんは学生時代から沖縄の戦争被害を取材し、イラク戦争に従軍した米兵を題材にした「テロリストは僕だった」(一六年)でテレメンタリー年間優秀賞を受賞している。

 「沖縄スパイ戦史」(百十四分)では、さまざまな知られざる戦史が描き出される。

 一九四五年四月に米軍が上陸し、民間人を含む二十万人以上が犠牲になった沖縄戦。その直前、旧陸軍中野学校の青年将校が少年を中心とするゲリラ部隊「護郷隊」を組織し、特殊兵器を使った謀略戦の訓練を行った。少年らは米軍戦車への特攻攻撃をしかけるなどして約百六十人が死亡。けがや病気で足手まといになり殺害された人もいた。

 自宅の裏山で亡くなった中学生の息子を待ち続ける母親、戦死したはずの兄が軍医に銃殺されたことを最近になって知った男性。戦後三十年以上、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんできた人もいた。戦争は終わっても秘密戦に終わりはなかった。

 米軍が上陸しなかった島でも悲劇は起きた。波照間島の島民は西表(いりおもて)島に強制的に移住させられマラリアで約五百人が死亡した。これは旧陸軍中野学校の卒業生が指揮した。「住民が捕まればスパイになる」。沖縄では「軍機保護法」に基づき、住民同士を監視させ、スパイリストがつくられた。軍の機密を守るため多くの島民が殺害されたが、地元の有力者を集めた「国士隊」も加担した。

 三上さんは与那国、石垣、宮古と南西諸島で進んでいる自衛隊増強に「沖縄が再び戦場になりかねない」と将来を懸念する。「戦争は軍隊が駐屯した時点で始まっています。沖縄では軍隊のいた島の人たちばかりが死にました。軍隊は住民を守ってはくれません」。大矢さんは「戦後七十三年で、戦争体験者の多くは亡くなりましたが、負の体験から学ぶことが大切。映画をきっかけに若い人たちに自分たちが生まれてきた意味を、もう一度立ち止まって考えてほしい」と話している。

 来月十一日からは、横浜市中区のシネマ・ジャック&ベティでも上映される。

 

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