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【首都圏】

爆風、今もやまず44年 「三菱重工爆破テロ」当時の社員が振り返る

日記を見ながら、事件当時を振り返る宗像善樹さん=さいたま市で

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 一九七四年八月三十日午後零時四十五分、東京駅から徒歩約二分の東京都千代田区丸の内仲通りで起きた「東アジア反日武装戦線『狼』」による三菱重工ビル爆破事件。戦後初の無差別爆弾テロで、死者八人、重軽傷三百七十六人に上った。被害にあった当時の三菱重工社員が自らの体験を基に事件を振り返り、「三菱重工爆破事件」と題する本を出版した。企業の危機管理面でも役立つ一冊といえる。 (長竹孝夫)

 筆者は、宗像善樹さん(75)=さいたま市在住。事件当時、社内にいて、建物全体が突き上げられるような激しい揺れを感じたという。右耳の鼓膜を損傷して聴力を失い、吹き飛んできたビルの厚い窓ガラスの破片で全身傷だらけになった。

 宗像さんは、爆弾テロの犠牲者となった同僚や通行人の霊を弔う鎮魂と、事件を風化させてはならないとの思いから二〇一〇年に「爆風」と題する本を「沖島信一郎」のペンネームで出版。読者から「危機管理に役立つ」と評価され、「東日本大震災では、おかげで落ち着いて対処することができた」との感想も届いた。「企業の間では、『危機管理のバイブル』として評価が高かった」と打ち明けた大企業の元役員もいた。

 この「爆風」は、その後出版社が事業停止に追い込まれて絶版。そこで、宗像さんは世界各地で爆弾テロが頻繁に起きている近年の社会情勢に鑑み、「もう一度、危機管理に関する本を世に出そう」と決意。加筆、修正、削除を加え、タイトルも変えて、このほど出版した。

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 「三菱重工爆破事件」の第一章は「爆風」。事件当時のビルの内外の動き、社員らの対応などがリアルに表現され、筆者自身の思いも随所に。第二章「畏友の死」は、同僚の死を顧みながら事件を振り返る。「その後の日々を生きて」の第三章は、事件後の同僚とのやりとりも如実に表現されており、生々しい。

 「あとがき」で、宗像さんは「事件から四十四年がたち、あの時テロに立ち向かった同僚も一人逝き、二人逝き。寂しい限りです。果敢にひるむことなく、わが身を顧みず、仲間の命を救おうと死力を尽くした。彼らの必死の形相が、今も脳裏に浮かぶ」と触れた。「三菱重工爆破事件」(幻冬舎)は千円(税別)。

 

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