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【首都圏】

言葉を駆使 真実に迫る 名作生み出すスタジオジブリ 鈴木敏夫さんに聞く

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 「スタジオジブリ 鈴木敏夫 言葉の魔法展」(北陸中日新聞など主催)が金沢市の金沢21世紀美術館で開かれている。25日まで。スタジオジブリ代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫さん(69)は「監督の意図、作品の本質を理解した上で、どんな言葉で、どうやって伝えるか?」に心を砕いてきたという。言葉への思いを鈴木さんに聞いた。(押川恵理子)

 −学生時代から続ける「言葉集め」とは。

 言葉が好きなんです。言葉で考えたことを声に出すと広がる。やがてその言葉に思考が支配される。支配された自分を否定すると、新しい発見がある。それを繰り返してきた人生かな。

 例えば、「私はあなたが好きです」と言ったとたんに好きになる。好きという感情があったから言ったのか、言葉を言うことで好きになるのか。難しいですよね。寺山修司が面白いことを書いていました。人は愛しているという言葉を何回言えば、本当にその人を愛せるのだろうか、と。

 −富山県生まれの芥川賞作家、堀田善衛さんを尊敬しているそうですね。

 著書の「広場の孤独」は学生運動の時に役に立った本でした。AとBが争っていて、自分はどちらの立場に立つんだという時に、もうひとつの立場があるよと、指し示してくれた。AとBの戦いを観察して文章に表す。目からうろこでした。

 −堀田さんゆかりの書も展示されます。

 「遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけむ 遊ぶ子供の声きけば

 わが身さえこそ動がるれ」。堀田さんは「梁塵秘抄(りょうじんひしょう)」を好きだったんでしょうね。色紙に書いたものをもらい、僕の部屋に飾っています。

 −堀田さんの考え方は仕事にも生きましたか。

 肩の力を抜いて、第三の立場で仕事をやりたいと思っています。当事者はいろんなものが見えない。そうじゃなくて、いろんなものを見通してやりたい。作品をつくることは、ある動機を持って、計画して、実行に移すこと。宮崎駿の動機は何か、どう計画したか、今何をやっているのか、探るのが好きです。絵コンテから推理する。

 −言葉で作品の本質に迫る。

 ある真実を言い当てることが、言葉を駆使することでできるわけですよ。茨木のり子さんの詩「さくら」の最後の二行が大好きなんです。「死こそ常態 生はいとしき蜃気楼(しんきろう)と」。人生が分かった気がする。

<すずき・としお> 1948年、名古屋市生まれ。78年から月刊誌「アニメージュ」を編集しながら「火垂るの墓」「となりのトトロ」など高畑勲、宮崎駿両監督の作品製作に関わる。85年にスタジオジブリの設立に参加し、89年からジブリの専従。大ヒット作を次々と生みだす。

 

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