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【首都圏】

<中野優理香のJAXAフライトディレクタ通信> 地上操作で衛星放出

 ISS(国際宇宙ステーション)での作業は、宇宙飛行士だけがしているわけではありません。人工衛星放出という重要なミッションを、地上のフライトディレクタが遠隔操作で遂行することもあります。しかし、いつもうまくいくわけではありません。

 二〇一四年十一月、米航空宇宙局(NASA)の超小型衛星「SpinSat」を「きぼう」のエアロックから放出するミッションがあったときのことです。

 衛星の直径は約五十六センチ、重さ約五十キロ。「きぼう」のエアロックを通じ、船外に搬出され、ロボットアームにより放出位置まで移動する段取りです。

 放出時刻は決まっており、宇宙飛行士に軌道上から放出時の写真を撮ってもらう段取りです。世界が固唾(かたず)を飲んで見守っていました。そんな中、エアロックで予期せぬ不具合が起き、緊急停止が起きてしまいました。

 扉の中の小部屋を真空にし、衛星を外部へ出すエアロックと、宇宙空間で衛星を運ぶロボットアームはISSで「きぼう」だけが持つ機能。このアクロバティックな操作は全て「KIBOTT(キボット)」と呼ばれる地上のロボットアーム運用担当者が遠隔操作で行います。

 エアロックでの緊急停止という不具合処置に追われ、時間はどんどん過ぎていきます。一旦は復旧したものの、今度はロボットアームで振動を検知し、緊急停止が起きました。

 二度も別々の機器で緊急停止が起きるのは前代未聞です。他国と調整の嵐が続きました。

 私はフライトディレクタに認定されて間もなかったため、「これがフライトディレクタのプレッシャーなのか」と痛感し、涙が出そうでした。

 その中でチームと協力し、計画を調整し、宇宙飛行士の助けを得ながら一つ一つ不具合を復旧しました。

 そして最後にはKIBOTT担当者が圧倒的な追い上げを見せ、十一月二十八日の定刻通り衛星を放出させることができたのです。この時の達成感は昨日のことのように思い出せます。

<なかの・ゆりか> 宇都宮市出身。宇都宮市立御幸小学校、慶応義塾湘南藤沢中・高等部を経て慶応大理工学部卒業。2012年4月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)入社。14年8月から国際宇宙ステーション(ISS)にある日本の実験棟「きぼう」のフライトディレクタ。17年11月から宇宙ステーション補給機「こうのとり」のフライトディレクタの訓練を始める。

 

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