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【社会】

防衛装備庁、中古武器輸出を検討 「無償・低価格」特例法で

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 国産の中古武器を無償や低価格で輸出できるようにするため、防衛装備庁が法整備を検討していることが分かった。武器輸出を原則認めた二〇一四年春の政策転換を受けて進む輸出の仕組みづくりの一つ。同庁装備政策課は新興国を念頭に「関係を強化して安全保障環境を安定させる上でも、新たな法整備は必要だ」とするが、「日本周辺国の軍備増強を助長する」と懸念する声もある。

 装備政策課によると、防衛装備移転三原則の閣議決定を受け、安全保障や災害救援活動などで防衛省が支援している新興国から、自衛隊が使用する装備の提供を求める声が高まっている。要請している国には、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国や南アフリカ、ブラジルなどが含まれているという。

 国有財産の管理・運用を規定する財政法は「無償または適正な価格なくして譲渡してはならない」と規定し、無償や低価格での提供を禁じている。このため、武器輸出を財政法の例外扱いとする法律(特例法)をつくり、一七年以降の国会提出を検討する。輸出対象はヘルメットや防弾チョッキから地雷除去機、装甲車、潜水艦までさまざまな装備を想定する。

 日本は過去の国連平和維持活動(PKO)支援などで、他国に重機や地雷探知機など殺傷能力を伴わない装備を提供した際も、特別措置法を制定。提供時期や対象を限定し、無制限に適用されないように歯止めをかけてきた。

 防衛省が設置した防衛装備移転に関する有識者の検討会(座長・白石隆政策研究大学院大学学長)は一五年九月、「不要な中古装備品を無償・低価格で移転できる制度が必要」という提案を盛り込んだ報告書をまとめた。これを受け、検討を始めた装備政策課は「技術流出の問題などをクリアする必要はあるが、法整備すれば新興国の要望に応えられる」と説明している。

 軍事ジャーナリストの神浦元彰氏は「新興国への武器輸出は、結果として、日本の周辺国間の軍備増強を助長し、緊張関係を高めることになる」と懸念している。

◆転売リスク 手つかず

 <解説> 日本の武器輸出政策が原則禁止から原則容認に変わって一年九カ月、輸出への地ならしが進む。防衛省が設置した武器輸出の課題を検討する外部有識者会合は、中古武器の無償・低価格輸出のほか、政府系銀行から武器購入国への融資など多岐にわたって提言し、防衛装備庁が個々に検討している。

 外交面でも準備は進む。武器輸出には、情報保護や目的外使用を禁じるなど協定を結ぶ必要がある。政府は十一月にフィリピンと協定締結で大筋合意し、十二月にインドと締結した。オーストラリアへは潜水艦の売り込みを進めている。

 防衛省幹部は武器輸出の意義を「武器の操作や整備、補修などを通じ、他国の軍人と自衛隊が交流を深めることは、日本とその国との安全保障を強化させるものだ」と説明する。しかし、技術流出や輸出した武器が第三国に転売される危険など、クリアしなければならない問題は多い。

 武器輸出が本格化すれば、日本人が造った武器によって人々が殺傷されることも現実となる。戦後日本が歩んだ平和国家の道のりは、過去のものとなりかねない。 (望月衣塑子)

 

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