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【社会】

亡き友 一緒に成人しよう 川崎中3いじめ自殺 同級生写真携え式に

篠原真矢さんの母真紀さん(右)から、真矢さんの写真を預かった小島萩司さん=7日、川崎市麻生区で

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 成人の日の十一日、全国各地で成人式が開かれる。新成人は約百二十万人。二〇一〇年、いじめを苦に自殺した川崎市の市立中学校三年、篠原真矢(まさや)さん=当時(14)=も、その一人になるはずだった。真矢さんの死を悼む友人たちと今も交流を続ける両親は、成人式の会場に持っていってもらおうと、真矢さんの写真を託した。 (山本哲正)

 「成人式を一緒に迎えさせたかった」。真矢さんの遺影が飾られた同市麻生区の自宅で、母の真紀さん(49)はこう漏らした。

 真矢さんは、中学校で友人をいじめから救おうと頑張った末、同学年の四人組から逆にターゲットにされた。暴力を振るわれるなど追いつめられ「友だちのことを守れなかった」と遺書を残し、一〇年六月七日に自宅で自殺した。

 月命日の七日は今も自宅に、真矢さんと中学校同学年の友人たちが、多いときで七、八人訪れる。彼らは大学生活など近況を仏前に報告し、父の宏明さん(51)や真紀さんと歓談する。

 命日が週末と重なれば泊まる人もいる。私立大学生の小島萩司(しゅうじ)さん(20)もその一人。真矢さんとは野球部で「相棒」と呼び合った仲だ。真矢さんは外野手。小島さんは三塁手で、自分が出場した中学生最後の試合では、ユニホームの内側に真矢さんの背番号「11」を縫い付けた。

 小島さんは月命日の弔問を欠かさない訳を「定例行事のようなもの」と多くを語らない。真紀さんは、真矢さんを助けられなかった自責の念や後悔があるのでは、と思っていて「私たちに近い感情を持ってるのかな」とほほ笑む。

 そんな息子の友人たちが成人することに、真紀さんは、祝う気持ちが自然に湧くという。ただ、真矢さんが大人になっていたら、と想像するときもあり「スーツを買ってあげたかったな」とも。真矢さんの将来の夢は警察官。人の役に立つ仕事がしたいと話していたという。

 今月七日、自宅を訪れた小島さんは「真矢さんの写真を成人式に持っていこうと思います」と切り出した。真紀さんが頼もうと思っていたところだった。真紀さんは「主役はこの子たちだから、邪魔したくない」との遠慮もあり、目立たぬように小さめのL判の写真にした。

 真矢さんが中学校の校庭に立つ姿を写している。「一緒に連れていってくださいね」。真紀さんは、そう言って笑顔を見せ、小島さんに手渡した。

 <川崎市立中学校いじめ自殺事件> 2010年6月7日、川崎市多摩区の市立中学に通う篠原真矢さんが、友人をいじめから守れなかったと悔やむ遺書を残して自殺した。市教育委員会を中心とする調査委員会は、遺書で実名の挙がった4人による真矢さんと友人へのいじめを認定。4人のうち3人は暴力行為処罰法違反の疑いで書類送検、家裁送致され保護観察処分となった。残る1人は児童相談所に通告された。

 

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