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【社会】

ツアーバス事故 同業の運転手に聞く 「体力的にギリギリ」「明日はわが身」

スキーツアーのバスに乗り込む乗客=16日午後11時15分、東京都新宿区で(淡路久喜撮影、画像を一部処理しています)

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 大学生ら十四人が死亡した長野県軽井沢町のバス事故では、バス運行会社による運転手の健康管理の甘さが明るみに出た。「夜行日帰り」という強行日程を担当するドライバーの本音はどうなのか。事故を起こしたバスが到着するはずだった長野県の北志賀高原のスキー場と、首都圏の主要な発着場となっている東京都の新宿駅西口周辺で聞いた。 (斉藤和音、木原育子)

 「勤務時間が不規則で体力的につらい。現地での待機時間はホテルで寝るが、自宅じゃないのでストレスを感じる」。四〇センチの積雪がある北志賀高原。男性運転手(50)は「少しうつらうつらして、高速道路の入り口を通過してしまったこともある」と打ち明けた。

 東京を深夜に出て翌朝スキー場に着き、夕方に戻る日帰りツアー。一万数千円前後と格安で、若者らの利用が多い。運転歴二十四年目の男性運転手(45)は「眠気を感じることはよくある」。ガムをかんだり、片耳だけイヤホンをして音楽を聴いたりして「何とか気を紛らわす」。

 一方の新宿。事故を起こした土屋広運転手(65)=死亡=について「本当は疲れていたんじゃないかな」と想像するのは、土屋運転手と同じ六十代の男性運転手。繰り返されるツアーバスの事故に「構造的な問題、価格競争の問題もある。他より安くするには、それだけ何かが犠牲になっている。運転手は、体力的にギリギリの状態です」。

 「バスの運転が夢だった」という男性運転手(50)は昨秋入社し、一カ月でハンドルを握るようになった。最近、碓氷(うすい)バイパスも通った。事故を聞いて冷や汗が流れたといい、「明日はわが身です」。

 男性運転手(42)によると、行き先や行程を知らされるのは二、三日前。「毎回同じルートではないので、気を引き締めないといけないんです」と明かす。

 事故があった十五日未明は長野県のスキー場に向かっていた。午前六時ごろ、乗車していた若者たちの携帯電話が次々に鳴りだした。ニュースを見た家族らから連絡が入ったのだ。

 スキー場で降りた学生の一人から「安全運転、ありがとうございました」と言われた。こんなことは初めてだった。「相棒の運転手以外、人と話さない、関わらなくてもいいという閉鎖的なところもあるから。うれしかった」

◆過酷労働離職率高く

 国土交通省によると、ツアーバスなど貸し切りバスの事業者数は、ここ十五年で一・五倍に。事業を免許制から許可制に規制緩和した二〇〇〇年を境に新規参入が急増した。運転手の採用も増えているが、一社あたりの運転手は一四・三人から一〇・五人へと大幅に減った。

 運転手(乗り合いバスを含む)の平均年収は下がる一方。五十代では〇一年に六百十九万円あったのが、一三年には四百八十八万円に。正社員も九割から七割にまで落ち込んだ。乗客七人が死亡した一二年の関越自動車道の事故の後も低賃金、長時間労働の傾向は止まらず、若い人が業界を敬遠。六人に一人の運転手が六十歳以上だ。

 一四年の同省の調査では、入社一年以内に29%が、四年以内に48%が退職。外国人観光客の増加への対応も求められる中、バス会社三十五社のうち三十四社が「運転手不足による悪影響が出ている」と回答した。 (皆川剛)

 

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