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【社会】

新国立で消える古里 半世紀暮らす2世帯「残らせて」

退去期限が30日に迫り、引っ越し作業が相次ぐ霞ケ丘アパート=23日、東京都新宿区で

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 二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの主会場になる国立競技場の建て替えに伴い、東京都が取り壊す都営霞ケ丘アパート(新宿区)からの退去期限が今月三十日に迫った。前回一九六四年大会を機に建設された当時から暮らす二世帯が退去に納得せず、住み続けたいと都に訴えている。 (松村裕子)

 「住宅の明け渡しを請求します」。一月中旬、介護が必要な親と二人で暮らす六十代の女性宅に、都知事名の通知が届いた。退去しない場合は訴訟を起こすことや、二月から解体工事に着手するとも書かれていた。「ここで暮らし続ける方法はいくらでも考えられるのに、都は検討しようとしない。壊す必要があるのか、納得できる説明がほしい」

 十棟三百戸分があるアパートの前には、引っ越しをした居住者の粗大ごみが山積みに。わが家の上も下も、既に引っ越して空き家になった。

 霞ケ丘アパートが六四年大会に合わせて建設される前からこの地に根を下ろし、アパートにも完成当初からずっと住んでいる。「私にとっては古里。簡単になくされてはたまらない」と話す。

 一人暮らしの七十代女性も、このアパートで暮らし続けることを希望してきた。「当初の国立競技場の計画は白紙撤回されたのに、都営住宅の敷地は当初の計画通りに公園にする必要があるのか」。都に対して「解体ありきで誠意がない」とも憤っている。

 都によると、昨年十月現在の居住者は百二十二世帯。移転先として、新築の神宮前(渋谷区)と新宿若松町(新宿区)、百人町(同区)の都営住宅を紹介しており、親族宅などに移った世帯を除き百十六世帯が移転・入居を決めた。

 説明不足の指摘に対し、都側は「何度も訪問したり電話をかけたりして理由を説明してきた」と強調。希望を踏まえて移転先を紹介してきたが、残る二世帯からは納得が得られていない。居住者がいなくなった棟から解体を始める方針で、担当者は「話し合いを続けて、移転に理解を得たい」と説明している。

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◆都は来月中にも解体開始の方針

 東京都は2月からアパートの解体を始め、11月中には終えたい方針。新国立競技場の建設は2017年早々に始まる予定で、アパートの敷地は工事車両の待機場や資材置き場などに使われる。

 将来的には新国立競技場の建設用地として失われた都立明治公園の代替として公園に整備される。本格的な整備工事は20年東京五輪・パラリンピック後となり、大会期間中は競技場と最寄り駅とを結ぶ通路や、人のたまり場などとして活用される。

 

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