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【社会】

「警備しやすさ」幻に サミット対策 三重・愛知・東京に分散

テロリストに悪用されるのを防ぐため、放置された船の撤去が進む=三重県志摩市阿児町の神明漁港で

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 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が百日余り後に迫る中、警備当局は会場の三重、玄関口の愛知に、首都圏を加えた「三正面作戦」を余儀なくされ、神経をとがらせている。三重県志摩市の賢島は「警備しやすい」との前評判で会場に選ばれたが、現実には昨年十一月のフランス・パリの同時多発テロのように、脅威はいつ、どこへでも現れるからだ。 (安藤孝憲、北川成史、安永陽祐)

 「厳しいよ。『警備がしやすい』なんて、一体誰が言ったことなんだ」

 伊勢志摩サミット全体の警備計画を立案する警察庁の幹部は、こう漏らす。

 当初から指摘された課題の一つが「経路」だ。各国首脳は愛知県常滑市の中部国際空港に降り、ヘリで会場入りするとみられるが、当日が荒天の場合、空路の三倍以上の百九十五キロを車で移動することになる。三重県警は高速道路沿いの山林をかき分け、不審物を捜索しなければならない。

 パリでは劇場など人が集まる場所でテロが起きた。会場に近い大都市・名古屋も格好の標的となる。「気持ちの上では『三重・愛知サミット』だ」。警察幹部の言葉が困難な状況を暗示する。加えて、東京など国の中枢が狙われる可能性も排除できない。

 安倍晋三首相が志摩市でのサミット開催を表明した昨年六月五日の夜、政府関係者は「問題は空港からの移動だけ。島へ渡れば、あとはやりやすいよ」と声を弾ませた。賢島につながる橋は二つだけ。封鎖すれば孤島になる。規制対象の住民が約百人と限られ、人の移動が把握しやすい。こうした事情から警備は難しくないと考えていたのだ。

 その言葉も、今は空虚に響く。昨年十一月以降、三重県や県警が志摩市などで重ねる住民懇話会。主眼の一つが、会場周辺の海域に浮かぶ真珠養殖の「いかだ」。英虞(あご)湾の美景の象徴が、警備上の障害になりかねないとして、住民側、警察側双方の悩みの種になっている。

 海上警備を担う海上保安庁幹部は「いかだも含めて賢島の風景。撤去などは考えていない」と話す。だが、入り組んだリアス式海岸は警備がしにくく、テロリストも潜みやすいため、操業の自粛や警備艇の展開に「協力を求めることにはなるだろう」と明かす。

 サミットがある五月下旬は真珠養殖で最も重要なアコヤガイへの「核入れ」の季節に重なり、漁業者を中心に不安は大きい。賢島を含む神明地区の自治会長、山崎勝也さん(71)は懇話会で「無事のサミット成功は住民の願いでもある。だからこそ、警備計画の一日も早い全面開示を求めたい」と訴えた。

 

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