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【社会】

沖縄の若者の葛藤知って 慶大生が米軍基地テーマに映画

映画「人魚に会える日。」を監督した慶応大生の仲村颯悟さん=東京都渋谷区で

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 「私たちは無力なんですか?」。沖縄県名護市辺野古(へのこ)での米軍基地移設問題に揺れる、地元の若者の葛藤を知ってもらおうと、同県沖縄市出身の慶応大二年、仲村颯悟(りゅうご)さん(20)が監督した映画「人魚に会える日。」が完成し三月、東京・渋谷の映画館「ユーロライブ」で上映する。「米軍基地問題は生活と絡み合い僕自身答えが見つからない。本土の人たちと問題を共有するきっかけになれば」との思いを込めた。 (安藤恭子)

 「ブルブルブル…」。空から降り注ぐ米軍機の爆音。主人公の女子高生ユメは、かつて米軍機の事故を目撃したトラウマ(心的外傷)から、耳を押さえて坂道にしゃがみ込む。

 二〇〇四年に米海兵隊の輸送ヘリが沖縄国際大(同県宜野湾(ぎのわん)市)の建物に衝突、炎上した事故を思わせる一場面だ。

 それでもユメは「海を壊して新しい基地を造るくらいなら、このままでいい」と基地移設に反対する。同級生の裕人は「どこかが犠牲にならなきゃいけないんだ」とつぶやく。米軍基地への複雑な思いが、スクリーンににじみ出る。

 仲村さんも、米軍基地の近くで生まれ育った。級友の三人に一人は親が基地で働く。米兵と日本人女性の間に生まれた友達は「自分は基地があったから生まれた」と話した。

 「沖縄の子はみな基地を語るし、賛成か反対か、簡単に二極化できない。基地は当たり前にあるもので、同じ地域でいろいろな考えの人たちが暮らしてきた」と振り返る。

 仲村さんが慶応大に進学したのは一四年。六月二十三日の「慰霊の日」を同級生の誰も知らないことに衝撃を受けた。太平洋戦争で激しい地上戦となった沖縄戦で組織的戦闘が終結した日だ。

 戦争を体験した仲村さんの祖父は今も「敵国の基地があるのは耐えきれない」と漏らす。「慰霊の日に黙とうをささげ、平和を願うのは当事者の沖縄だけ。沖縄のことなんか誰も知らない。ならば、伝えなければ」と映画制作を決意した。

 撮影はその年の夏に沖縄で行い、歌手のCoccoさんら地元出身の芸能人が無償で出演してくれた。高校時代の友人ら大学生のスタッフ四十人以上も撮影や宣伝に奔走し、二月に沖縄、三月に東京と大阪で公開される。

 仲村さんは「沖縄の大人も若者も無力かもしれない。それでもあきらめられない思いを描いた。主人公たちの会話を通じて、沖縄の今を感じてもらえれば」と訴えている。

 ユーロライブでは三月三〜七日の期間中に計十二回上映。各回で仲村さんのあいさつも予定している。当日券は一般千五百円、高校生千円、小中学生五百円。問い合わせはユーロライブ=電03(3461)0211=へ。

 <なかむら・りゅうご> 1996年1月生まれ。慶応大環境情報学部2年生。小学3年生で自宅のハンディーカメラを使い、映像制作を始めた。地元の脚本コンペに応募、入選したのをきっかけに、13歳のときに映画「やぎの冒険」(2010年)で監督デビュー。ヤギを食べる沖縄の食文化と少年の成長を描いた同作は、上海国際映画祭の招待作品になるなど話題を呼んだ。

◆映画のあらすじ

 物語の舞台は、米軍新基地建設が計画される沖縄の架空の村「辺野座(へのざ)」。

 ジュゴンのすむ美しい海が基地建設で奪われることを気に病み、一人の男子高校生が姿を消す。同級生のユメと裕人は、級友を捜すヒントを得ようと、辺野座へと向かう。

 

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