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【社会】

転落死事件の川崎・老人ホーム 介護職員が定着せず 経験3年未満59%

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 入所者三人が相次いで転落死する事件が起きた川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」では、経験の浅い介護職員が多くを占めている。殺人容疑で逮捕された元職員今井隼人容疑者も事件当時、介護経験約半年の「新人」。仕事でストレスを抱えていたとの趣旨の供述をしており、介護現場での人材育成や職員の支援体制が、課題として浮かび上がる。

 神奈川県の公表している介護サービス情報によると、Sアミーユ川崎幸町の介護職員は、昨年八月時点で四十一人(常勤二十九人、非常勤十二人)。このうち、介護経験(他施設も含む)五年未満が三十二人(78%)、三年未満は二十四人(59%)だった。一方、十年以上は五人(12%)と少ない。

 二〇一四年度の一年間で、退職したのは二十一人。逆に、採用されたのは十八人で全体の半数近くが入れ替わっている。

 こうした仕事に不慣れな職員が多い状況は、介護の現場に共通する。公益財団法人「介護労働安定センター」(東京都荒川区)の一四年度の介護労働実態調査によると、介護職員の勤続年数は五年未満が六割以上を占め、平均勤続年数は四・六年だった。

 また、厚生労働省の調査では、介護施設などでの虐待の発生要因のトップは「教育・知識・介護技術などの不足」で、二番目が「職員のストレスや感情コントロールの問題」だった。

 「決して、私たちに関係ない話ではない。もう一度考え直す機会にしたい」。川崎市内の特別養護老人ホームの施設長(56)は、今井容疑者の逮捕翌日の十六日、職員に対し、入所者への接し方についてこう語りかけた。

 この特養ホームには、要介護度の高い高齢者を含め七十人以上が入所する。職員らは少しでも穏やかに生活してもらえるよう対応するが、施設長は「全員が満足してくれる対応は、やはり限界がある」。

 入所者からの求めに、何げなく返したひと言が、不満を持たれてしまうことも。コミュニケーションのすれ違いなどが重なると「私は役に立っているのか」と悩む職員もいる。

 介護労働安定センターによると、介護付き老人ホームの介護職の離職率は全国平均が23%。半数近くが入れ替わったSアミーユ川崎幸町は、離職率が極めて高かったとみられる。日本高齢者虐待防止学会副理事長の松下年子・横浜市立大教授(精神看護学)は「離職率が高いなら、独特の労働環境にあったと考えられる」と指摘。今井容疑者が仕事で抱えた仕事のストレスの解明が、焦点となりそうだ。 (山本哲正、上條憲也)

 

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