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【社会】

原発、別の道ないのか 89歳加古里子さん「若者よ考えて」

「1ミリずつでもより良い道を探っていくのが一番の早道」と訴える加古里子さん=神奈川県藤沢市で

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 関西電力高浜原発4号機(福井県高浜町)が二十六日午後、再稼働する。「これでいいのか、一人一人が考えてほしい」。福井県出身で、工学博士の絵本作家、加古里子(かこさとし)さん(89)=神奈川県藤沢市=は本紙を通じ、若者たちにそう呼び掛ける。 (聞き手・高橋雅人)

 政府や電力会社は楽天家なんでしょう。こんど原発の事故が起きたら、とは考えないんでしょうね。

 かつて勤めていた化学メーカーが原子炉で使う重水をつくっていました。優秀な部下たちが、一生懸命に研究しましたが、とんと目鼻が付かなかった。

 原子力って産業としてはなかなか成り立たないんです。原料のウランから取るのは熱だけでエネルギー効率は悪い。温水を出すから環境にも良くない。安価といわれますが、事故が起きたときのことを考えれば決して安くない。ない、ない、ないの三拍子そろっている。

 それなのにどうして止められないのか。原子力の技術を高めながら、同時にプルトニウムも手に入る。研究者の間で、核兵器を持つことが狙いだろうって話が出たこともあります。

 私は十九歳で敗戦を迎えました。軍国少年の私は飛行機乗りになりたかった。大人の言うことを信用しきって現実を見ていなかったんです。

 敗戦で、大人たちは信用ならないと思った。多くの大人たちは勉強もしなければ、問題を解決しようともしない。それではもう未来はないと思って、子どもたちに(大人を妄信するという)私のような過ちはしてくれるなと訴えて生きてきました。

 今も似ています。大人たちが過去から学ばず、苦しいこと、嫌なこと、つらいことを後世に残そうとしている。原発で出た使用済み核燃料を(無害になるまでの)十万年置いておくと言うけれど、十年先だって分からないのに、十万年なんて…。偉い大人が真剣に考えて(使用済み核燃料を処理する)土地の皆さんを説得するか、原発を止めるかしないといけないけれど、突き詰めて考える姿勢が一つも見えない。

 だから若い人たちには未来を見つめてほしい。これでいいのか。もっと、いい道がないのか。多少、つらいこともあるかもしれないが、一歩一歩、小さいけれど、一ミリずつでもより良い道を探っていくのが一番の早道になるんじゃないか、と。

 何もしないのは見過ごすことと同じ。風力や太陽光発電を増やしながら、原発を一つずつでもなくしていく。できるはずです。身近な人と話をしたり、グループをつくったり、少しでも何かをしていこう。一人一人の自覚が高まれば未来は開けます。

 <かこ・さとし> 1926(大正15)年、福井県国高村(現越前市)生まれ。東京大工学部卒業後、化学メーカーに勤務する傍ら、福祉向上の活動に取り組む。59年に絵本「だむのおじさんたち」でデビュー。73年に退社し、創作活動に専念。代表作は「だるまちゃんとてんぐちゃん」などのだるまちゃんシリーズ、「からすのパンやさん」など。菊池寛賞など受賞多数。

 

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