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【社会】

体育館で車いすバスケがしたい 「床に傷」「タイヤ痕つく」都内自治体利用拒む

今年1月、水元体育館で車いすバスケットボールの練習に励む社会人ら。2月末に閉鎖された=東京都葛飾区で

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 「床が傷つく恐れがある」「タイヤの跡がつく」。そんな理由で、車いすバスケットボールのチームが東京都内で自治体の体育館を借りられず、練習場所の確保に四苦八苦しています。ところが、貸し出し実績のある体育館に聞くと「補修に特別な出費はない」と言います。四年後には、東京五輪・パラリンピックが開かれます。読者の皆さんは、どう思いますか? (森川清志、中沢誠)

 車いすバスケを始めて四年という男性会社員(44)は昨年、都内の体育館にチームで使わせてほしいと問い合わせ「床が傷つく」と断られた。「では個人練習で貸してほしい。個人なら転倒しない」と食い下がっても「タイヤの跡が」と言われた。「車いす用のトイレや駐車場はあるのに」と、やりきれなかった。

 葛飾区は老朽化した水元体育館を閉鎖し、隣に今月一日、水元総合スポーツセンター体育館をオープンさせた。古い体育館は車いすバスケに貸し出していたが、新体育館は貸し出さない。区は本紙に「別のスポーツ施設を車いすバスケの聖地にしたい」と説明するが、チーム側は「床が傷つくと言われた」と話す。

 「床を傷つける恐れがあるので、車いすバスケに限らず、フロアで車いすを使うこともご遠慮いただいています」。荒川総合スポーツセンターの運営担当者は二月下旬、本紙の取材にこう話した。「壁が強い衝撃に耐えうる構造になっていない」(品川区総合体育館)、「空きがない」(町田市立総合体育館)との理由で断るケースもある。

 車いすが転倒した場合、床が傷つく可能性はある。だが、車いすバスケの全国大会が毎年開かれる東京体育館の担当者は「細かい傷やタイヤ痕はつくが、日常の維持管理で対応でき、特別な出費はない」と話す。

 専門家らは、ドイツや米国などの先進諸国で「床に傷」を理由に貸し出さない例は聞かないと言う。日本では床を大切にという意識が強いと話す関係者もいるが、利用者側も衝突に備える車いすのバンパーにホースを巻くなどして床に配慮している。

◆競技への無理解 普及の壁に

 東京都は二〇一二年、障害者スポーツ振興計画をつくり、「障害のある人が地域でスポーツ活動を継続できる環境の整備」などを掲げた。計画作成部会の座長を務めた日本体育大の田中信行教授は、今回のケースについて「世の中の理解が進んでいない」と話す。

 「床が使えないほど傷つくならボコボコになるはずだがなっていない。タイヤの跡と言うが、スポーツシューズだって跡がつく」と指摘。障害者らが利用しやすいようにバリアフリー化した新しい施設を使わせないことも疑問視する。

 理解が進まないのは、国の取り組みが遅いためとみる。「中央教育審議会が、教員や教員免許を取る人に障害を理解するための教育導入をと初めて提言したのが昨年十二月。文部科学省ですら、そんな状況だ」と言う。

 四月には、障害を理由としたサービス提供の拒否や制限を禁じる障害者差別解消法が施行される。自治体などには、障害者が社会生活を営む上での障壁を取り除く「合理的配慮」の提供が義務化される。

 田中教授は「合理的配慮に抵触する可能性があるのでは」、内閣府は「線引きは難しいが、配慮できるのにしないのであれば差別に当たる」としている。

<車いすバスケットボール> ルールはバスケットボールとほぼ同じ。日本車椅子バスケットボール連盟の会員は男子が67チーム約600人、女子が7チーム約70人。都連盟には8チームが登録し、連盟に加入していないチームもある。国内では1964年パラリンピック東京大会を機に普及し始めた。日本代表の男子は今年のパラリンピック・リオデジャネイロ大会に出場する。

 

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