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【社会】

挑戦する建築士 保育所改修や脱原発で電力自立ハウス提案

 社会をデザインし直そう−。保育所の待機児童問題や原発問題など、困難な課題を解きほぐそうと建築士たちが動きだしている。東京都杉並区では20日、子育て経験のある女性建築士たちが、保育の質を上げながら定員を増やす改修策を提案。東京都調布市では市内の建築士が「電力自立」の家を完成させた。

保育所の改修案が提案されたシンポジウムで、参加者と意見を交わす建築士の村上美奈子さん(右)=杉並区役所で

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◆保育所改修提案 子ども目線で知恵結集

 公園を転用して保育所を造る計画を巡り、区と地域住民、待機児童の保護者の思いがぶつかる杉並区。二十日、区役所でシンポジウムを開き、きめ細かな工夫で定員を増やす保育所改修案を提案した東京建築士会杉並支部長の村上美奈子さん(76)は「子どものために前向きに議論する場をつくりたかった」と語る。

 待機児童問題が深刻な杉並区では、来年四月に「ゼロ」にすることを目指して公園への保育所建設を急ぐ。子どもの遊び場を守りたい住民は反対し、平行線の状態が続いている。

 村上さんは、かつて子どもを認可保育所に預けられず、認可外保育所や保育ママを駆使して育てた。保育所の必要性も、公園の大切さも分かる。「自分たちは見ているだけでいいのか」と議論が進まない状況を憂えていた。

 六月、建築士仲間の女性に思いを明かすと「ぜひやろう」。区内外から十人が集まった。

 本業の傍ら、保育所の設計図を手にみんなで現地を見学。「子どもが幸せで、職員も快適に過ごせる保育所を」と、保育環境の改善と定員増を同時に満たす案を模索した。

 シンポジウムには、田中良区長も出席。保育関係者や建築士から案への賛否にとどまらず、「母親が立ち話する空間も必要」「時代に合わせて変化できる建物を」などの提案も出た。「子どもの暮らしを想像し、寄り添う設計が大切」と子ども目線での議論を深める大切さを確認した。

 村上さんは「みんなで保育所のことを考え、応援する。そんなふうに社会を盛り上げる力になれたかな」と手応えを語った。(石原真樹)

「えねこや」の前に立つ湯浅剛さん(右)と妻の景子さん=東京都調布市で

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◆電力自立ハウス 災害時には開放

 電力会社の送電線につながず、太陽光発電など自然エネルギーで賄うオフグリッド(電力自立)ハウスを完成させたのは調布市の一級建築士・湯浅剛(つよし)さん(51)と妻景子さん(51)。災害時には拠点として地域に開放する。個人が「半公共」の場として電力自立の家を提供するのは、全国的にも珍しいという。

 東京電力福島第一原発事故後、原発のない社会を目指し「反対だけではなく、実践したい」と思い立った。

 自宅の隣の木造の空き家を買い取り、改修した。仲間やその子どもたちの協力を得ながら約五カ月で完成。「えねこや」と名付け、同様の電力自立の家を増やしていくため、仲間とともに一般社団法人「えねこや」も設立した。今後、環境問題などのイベントを開く場としても活用する予定だ。

 一部二階建てで広さは約四十六平方メートル。電力会社の送電線には接続せず、屋根に太陽光発電パネルと太陽熱温水器を設置した。発電した電力の一部は屋内の蓄電池にためて夜間や雨天時に利用し、温水器のお湯を風呂やシャワーで使う。

 建物全体に三重ガラスを利用したり、室内空気循環システムを導入したりして、エネルギー消費を少なくする。夏場の日中は発電量が多いため、エアコンも使える。冬は木質バイオマスの無電力ペレットストーブで暖める。公共の水道水を利用しているが、雨水タンクと近く掘る井戸で、非常時には自立可能の予定。

 湯浅さんは「空き家も活用しながら、『えねこや』が地域に増えれば、災害時でも安心」と話す。詳細は、インターネットで「えねこや」を検索。(安藤美由紀)

 

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