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【社会】

ホームの駅員を増やして 地下鉄転落事故現場を識者と歩く

 東京都港区の東京メトロ銀座線青山一丁目駅で十五日、盲導犬と歩いていた男性がホームから転落し、電車にひかれて死亡した。どうすれば事故の再発を防げるか。視覚障害者の転落事故を検証している成蹊大理工学部の大倉元宏教授(人間工学)と現場に立つと、歩行の手掛かりの大切さが浮かび上がった。 (唐沢裕亮)

 「どちらを向いているのか分からなくなり、頼りない手掛かりで正しいと思った向きに歩いた結果、ホームから落ちる視覚障害者が多い。このホームで視覚障害者が頼れそうなのは、壁か、点字ブロックくらいか…」。大倉教授が、現場を見回した。

 ホームの幅はわずか三メートルほど。しかも十本の柱がホームの端を知らせる幅四十センチほどの点字ブロックに重なっている。壁伝いに歩こうとしても、ベンチや脚付きの鏡が邪魔だ。ベンチに人が座っていれば、柱より内側で人が通れるスペースは三十センチ程度しかない。

 視覚障害者は、音や触感という限られた情報を頼りにしているだけに物を避けようとしたり、ぶつかったりすると、方向感覚を失ってしまう。安全に歩くためには、位置や向きの手掛かりが必要だ。大倉教授は「壁沿いの障害物を取り除き、スペースを確保する。ホームが広ければ、安全なルートを示す誘導ブロックを真ん中に設けるのも効果的」と話した。今すぐできる対策として、転落の危険度が高い駅で、ホームに立つ駅員を増やすことを挙げた。

     ◇

 二十九日、東京・永田町で開かれた超党派の国会議員の会合では、視覚障害者が再発防止策を提言した。転落経験があるという全盲の藤井貢さんは「ホームドアをつけてほしいが、緊急対策として(転落すると表示灯の音や光で運転士に知らせる)転落検知マットをホーム下に敷いてほしい」と訴えた。現状ではホームの床や壁、柱の色調が同じで、視力が弱い人には分かりにくいとも指摘した。

◆ホームドア設置に時間 周囲の声掛け重要

 東京メトロ銀座線は、日本で最初の地下鉄で、浅草−上野間が八十九年前の一九二七年に開業した。ホームの幅は二〜三メートル。ほかの路線では十メートル以上に拡幅される駅もあるのに比べれば、かなり狭い。上野駅の渋谷方面を除きホームドアもない。

 柱が点字ブロックを一部ふさいでいるのは、事故が起きた青山一丁目のほか日本橋、新橋、赤坂見附、外苑前の五駅。神田や京橋など六駅でも、柱がブロックに接している。

 車両の扉がかからない部分に簡易な柵を設ける鉄道会社もあるが、東京メトロ広報は「銀座線は古く、柵をつけるにもホームの補強が必要。同じ補強が必要ならばホームドアを設置する」と話す。ホームドアが、大規模改修中の新橋と渋谷を除く全駅に設置されるのは二〇一八年度で、それまで危険な状態は続く。

 赤坂見附駅で、白杖(はくじょう)で探りながら歩く男性を見かけた。近くにいた三十代くらいの女性が「お手伝いしましょうか」とさっと駆け寄った。周りの人の気配りが、最大の事故防止策だと改めて感じた。 (大野孝志)

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