東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 9月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

ブラックバイト訴訟で初弁論 「人生を狂わされた」

ブラックバイト訴訟の閉廷後に記者会見する大学3年生の原告=14日、千葉市で

写真

◆大学生、未払い、暴行主張

 大手飲食チェーンの千葉県内の店舗でアルバイトをしていた大学三年の男性(21)が、当時の店長らから暴行や暴言を受けた上、賃金の一部が未払いだとして、男性が働いていた店舗をフランチャイズ経営していた「DWEJapan」(同県成田市)側に慰謝料など計約八百万円を求めた訴訟の第一回口頭弁論が十四日、千葉地裁(小浜浩庸(ひろのぶ)裁判長)で開かれた。男性が意見陳述し「怖くてバイトを断れなかった」と強調した。

 会社側も意見陳述し「未払い分の賃金などは直ちに支払う用意があり誠実に対応したい。慰謝料については適切な解決を図りたい」と述べた。

 労働組合「ブラックバイトユニオン」によると、大学生らが学業に支障をきたすほどの過酷な労働を強いられる「ブラックバイト」を巡る訴訟は全国初という。

 訴状によると、男性は県内の店舗で勤務していた昨年四〜八月、昼すぎから深夜まで休みなく働かされ、大学の授業に出られなかった。当時の店長らから首を絞めるといった暴行を受けた上、不手際があったとして「四千万円の損害賠償請求をする」などと脅されたと主張している。

◆厚労省「労働条件確認を」

 ブラックバイトは非正規雇用者に頼る企業が多くなるにつれて社会問題化した。経営者にとって、低賃金で融通が利く上、法律の知識が乏しい学生は使い勝手がいい。

 厚生労働省が昨年八〜九月、アルバイト経験のある大学生ら千人を対象に実施したインターネット調査によると、学生の60・5%が労働条件に関するトラブルを経験。「採用時に合意した以上のシフトを入れられた」(14・8%)、「準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった」(13・6%)などが多く、働く際に労働条件を示した書面を交付しないケースも過半数を占めた。「暴力や嫌がらせを受けた」という学生も2・8%いた。

 こうした実態を受け、厚労省はアルバイトを始める新入学生が多い今年四〜七月、学生用の「労働条件通知書」やトラブル事例を掲載したリーフレットを配布したり、大学などで出張相談をするなどキャンペーンを展開した。担当者は「まずは自分の労働条件を確かめ、おかしいと思ったら地域の労働基準監督署や『労働条件相談ほっとライン』などの窓口に相談してほしい」と呼び掛けている。 (奥野斐)

◆自腹20万円超も

 「学生だからといって会社の都合だけで働かせていいわけありません。私の人生は大きく狂わされたのです」。法廷で意見陳述した男性は、アルバイト先で過酷な仕事を強いられた状況を切々と訴えた。

 意見陳述によると、勤務先の店では退職者が補充されず、仕事を押しつけられるようになったという。

 女性店長に勤務日を減らしてもらおうと相談したが、「ここで仕事できないやつが大学に行って何か意味があるのか」とののしられた。「ミスが多い」などの理由で殴られたことも。「自分がこんなことをされても仕方がないようなミスをしたのか、悩んだ」と振り返った。

 アルバイトを辞めようと店長に相談すると「懲戒解雇にする。就職できないぞ」と脅され、親に迷惑をかけたくないとの思いから、辞められなかった。「客への対応が悪い」と、総額二十万円以上の商品の代金を自腹で支払ったこともあった。

 弁論終了後、千葉市の弁護士会館で弁護団とともに記者会見した男性は「この裁判で自分が声を上げることで、他にブラックバイトの被害を受けている学生も、周りに相談したり行動を起こしやすくなればいい」と話した。大学の単位を多く落とし、四年生に進級できない可能性もあり、今は必死に勉強して遅れを取り戻そうとしている。 

  (中山岳)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報



ピックアップ
Recommended by