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【社会】

<過労社会 電通ショック> (2)残業70時間超えれば…作文

電通は深夜残業防止のため東京本社では10月24日から午後10時の全館消灯を始めた。午後10時前になると社員がゲートを通って帰宅を急ぐ=東京都港区で

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 十月六九・九時間、十一月六九・五時間、十二月六九・八時間−。

 電通の新入社員高橋まつりさん=当時(24)=が、昨年十二月に過労自殺するまでの三カ月間に会社に申告した残業時間だ。いずれも、労使協定に基づいて残業ができる月七十時間ギリギリだった。

 高橋さんは上司から「君の残業時間の二十時間は会社にとって無駄」「今の業務量でつらいのはキャパがなさすぎる」と言われていたという。

 会社の入退館記録などから遺族側が積算した高橋さんの残業は、実際には昨年十月九日〜十一月七日の一カ月で百三十時間に達していた。遺族代理人の川人(かわひと)博弁護士は今月七日の記者会見で、電通側が上限を超えないように過少申告させていた可能性を指摘した。

 二十五年前に電通の若手社員が過労自殺したことを巡る裁判で、最高裁は二〇〇〇年、会社側の責任を認めた。以降、電通はゲートで社員の入退館時間を記録し、申告した勤務時間と一時間以上のずれがあれば、会社が理由を確認するなど「適正な勤務管理、長時間労働抑制の取り組みを実施してきた」という。

 電通では、上司の命令がないのに定時を過ぎても会社にいれば、私的に会社に残った「私事在館」とみなし、勤務時間から除外している。社員は退館時、パソコンの勤怠管理システムにその日の勤務時間を打ち込んで申告。在社時間と開きがあれば、私事在館の理由を書いて上司に報告することになっている。

 例えば、勤務時間は午前九時〜午後七時と申告しても、上司の命令なく午後十時まで会社に残っていた場合、午後七時からの三時間は「自己啓発のため語学の勉強をしていた」などと報告する仕組みだ。

 四年前まで電通で働いていた藤沢涼さん(37)は「私も食事や休憩という理由で報告していたが、ほとんど作文。正直に働いた時間を申告していたら、とても月七十時間に収まらない」と明かす。

 「上司も会社も分かっているが、そのまま。むしろ正直に申告しようとしたら先輩から指導される」。月末まで十日残して七十時間を超えそうだと分かると、それから毎日、定時の午後五時半で仕事を終えたことにして、退社までの時間は「私事在館」と申告したことも。「こんなの労基署が勤務記録を見れば、すぐ怪しいと分かりますよね」

 抜け穴の時間管理。再発防止策を講じていながら、会社は高橋さんの命を守れなかった。

 高橋さんの労災認定を受け、電通は「労働基準監督署からの指摘を踏まえ『自己啓発』『私的情報収集』による私事在館は禁止した」と説明する。

 今月十七日、石井直(ただし)社長は全社員にメールで通知した。「これまで当社が是認してきた『働き方』は、当局をはじめとするステークホルダー(利害関係者)から受容され得ない、という厳然たる事実に他なりません」

 

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