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【社会】

多様性を渋谷から発信 LGBT課長に同性愛の男性、民間から起用

LGBT支援のシンボルマーク「レインボー・アイリス」を前に話す渋谷区男女平等・ダイバーシティ推進担当課長の永田龍太郎さん=同区で

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 東京都渋谷区が同性カップルを夫婦に等しい関係と認める証明書の交付を始めてから、十一月で一年。性的少数者(LGBT)を含め誰もが共生できる社会の実現に向け、区は九月に男女平等・ダイバーシティ(多様性)推進担当課長として、民間出身で同性愛(ゲイ)を公表している永田龍太郎さん(41)を抜てきした。二十九日には、LGBTの人たちが悩みなどを語り合うイベントも開かれる。 (神野光伸)

 「LGBTに対する社会の意識を変えたい」。永田さんは米・衣料販売大手GAP(ギャップ)日本法人で宣伝業務に携わった。

 同社では、性や身体の障害などによる差別を禁じ、多様性を認め合うことがルール。永田さんはLGBTの啓発イベントで協賛を求める人らを支援したり、店舗にLGBTの象徴のレインボーカラーを取り入れたりして、社の姿勢を知ってもらう取り組みを進めた。

 ゲイを自覚するようになったのは思春期のころだ。それまでも物腰の柔らかい話し方から「オカマ」などと中傷され、疎外感を感じてきた。「ゲイは笑いのネタでしかなく、救いの手はどこにもなかった」。高校を卒業すると故郷の福岡を飛び出し、自分を受け入れてくれる場所を求めて東京の大学へ進学した。

 だが、大学では周囲にゲイであることを打ち明けられず、卒業後の就職先でも息苦しさが付きまとった。「ゲイとして生きる自分を隠してきた。何かあったらばれるかもと、同僚らに対する想定問答を頭の中にいつも用意していた」

 状況を大きく変えたのが、GAPへの転職。職場には多くのLGBTの同僚がいて、誰もが当たり前のように接していた。「自分は特別じゃない」。初めてゲイであると公表できた。

 永田さんの経歴や活動を知った区は、当事者の気持ちを理解して共生社会施策をさらに進めてくれると期待し、声を掛けた。永田さんも「次は行政の中で、LGBTと地域をつなぐ手伝いをしたい」と応じ、九月中旬に採用が決まった。

 現在、区がカップルと公認したLGBTは十六組だが、まだ公にできない人も多いとみられる。「差別の問題はマイノリティー(少数派)側ではなく、マジョリティー(多数派)側にある」と永田さん。「証明書は通過点。存在しないものと扱われてきたLGBTの問題を、区民や事業者に啓発していきたい」

     ◇

 二十九日のイベント「LGBTコミュニティスペース」は午後二時半から、区文化総合センター大和田内の渋谷男女平等・ダイバーシティセンター<アイリス>で。LGBTの人であれば参加は自由。今後も月一回程度開く。問い合わせは同センター=(電)03(3464)3395。

◆支える動き広がる

 行政が同性カップルを公認することで差別や偏見を解消したいと、渋谷区が全国に先駆けて昨年四月に同性パートナーシップ条例を施行後、LGBTを支える動きは各地の自治体や企業に広がっている。

 東京都世田谷区は渋谷区と同時期に、同性カップルの宣誓に基づくパートナーシップ受領証の発行を開始。今月二十八日現在で四十組に交付した。同様の取り組みは、三重県伊賀市や兵庫県宝塚市なども導入している。

 企業ではLGBTが働きやすい職場環境づくりが進む。渋谷区の長谷部健区長は「企業が(区の取り組みに)賛同してくれたのは大きい。実際の夫婦と同じように福利厚生などを受けられる人が増えてきている」と手応えを話す。

 渋谷区と世田谷区は同性パートナーがいる職員に「結婚」祝い金などの支給を始め、千葉市も「結婚」休暇などを取得できる制度を来年一月に導入する。ただ、行政がパートナーと認めても税制面や相続関係などで結婚と同様の待遇は受けられず、LGBTを巡る法整備を求める声は強い。

 <ながた・りゅうたろう> 1975年、福岡県生まれ。99年に東大教養学部卒業後、広告代理店の東急エージェンシーに就職。仏高級ブランドのルイ・ヴィトン日本法人を経て、2007年にGAP日本法人に入社。16年9月に退職、渋谷区男女平等・ダイバーシティ推進担当課長に就任した。

 <LGBT> レズビアン、ゲイ、両性愛のバイセクシュアル、性同一性障害など生まれつきの性別に違和感を持つトランスジェンダーの頭文字をとった総称。

 

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