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【社会】

「ご当地小説」花盛り 地方書店発 ヒット作も

横浜市内の書店に並ぶ神奈川本大賞受賞作の「白バイガール」

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 「京都の喫茶店が舞台のミステリー」から「大分発のSF」まで、地方が舞台の「ご当地小説」が花盛りとなっている。出版不況で「町の本屋さん」の苦境が続く中、地方の書店から火が付いたヒット作も生まれている。そんな文芸版“地方創生”の動きを追った。

 十一月、紀伊国屋書店横浜みなとみらい店(横浜市中区)に「神奈川本大賞受賞!!」と書かれたパネルが飾られていた。書店員や図書館員らが運営する地域版本屋大賞で、第二回受賞作に決まった佐藤青南(せいなん)さんの「白バイガール」(実業之日本社)のPR。神奈川県警の女性白バイ隊員の成長を描く、お仕事小説だ。

 佐藤さんはデビュー約五年の新鋭。「新刊を無条件で推してもらえる知名度はないので、応援してくれる地域が一つあると気持ちが楽です」。書店の担当者も「地元が舞台だとお薦めしやすい」。

 大分が舞台の乙野四方字(おとのよもじ)さんのSF「僕が愛したすべての君へ」と「君を愛したひとりの僕へ」(ともに早川書房)は、今年六月の刊行直後から大分の書店で売れ、その後、勢いが全国に広がった。現在は累計十五万部。

 西村京太郎さんのトラベルミステリーや大沢在昌さんの「新宿鮫(しんじゅくざめ)」など地名を冠した作品は多いが、最近は京都や鎌倉など古都や、下町が舞台の作品が目立つ。先駆けは二〇一一年から続く三上延(えん)さんの「ビブリア古書堂の事件手帖(てちょう)」(KADOKAWA)。鎌倉の古書店主が謎解きに挑む人気シリーズだ。北海道・旭川が舞台の太田紫織さん「櫻子(さくらこ)さんの足下(あしもと)には死体が埋まっている」(同)や、京都の喫茶店を舞台にした岡崎琢磨さんの人気シリーズ「珈琲(コーヒー)店タレーランの事件簿」(宝島社)など軽いタッチのミステリー作品も多い。

 今年刊行の話題作では、埼玉県川越市の古い街並みを描いた、ほしおさなえさん「活版印刷三日月堂」(ポプラ社)、加藤泰幸さんの「尾道茶寮夜咄堂(よばなしどう)」(宝島社)など、舞台はますます多彩に。さながら作家による「国盗(と)り合戦」の様相だ。

 日本では年間七万点超の本が出版され、新刊でもたちまち埋没してしまう。「地元が舞台の作品があれば、書店も良い場所に置いて推してくれるのではないか」と、宝島社の宇城卓秀(うしろたかひで)さんは期待する。「尾道茶寮夜咄堂」も、熱心に推薦する広島県の書店に支えられ、発売一カ月で重版した。

 「土地の力や雰囲気を生かせば物語との相乗効果が生まれるし、読者が手に取るきっかけにもなる」。ご当地小説の盛り上がりに、映画「君の名は。」など物語の舞台を訪ねる「聖地巡礼」に近い感覚を抱くという宇城さん。流れは当面続くとみる。「地方の土地の雰囲気を、みんなで楽しもうという意識が広まっているのかもしれません」

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