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【社会】

関東大震災「朝鮮人や中国人が殺害された」 横浜の副読本、草稿では削除

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 横浜市教育委員会が発行する中学生向けの副読本の改訂版で、草稿段階では削除されていた「関東大震災(一九二三年)での朝鮮人・中国人虐殺」の記述について、市教委が市民団体の批判を受けて「朝鮮人や中国人が殺害される痛ましい事件が起きた」という表現で復活させる方針を固めたことが関係者への取材で分かった。来年三月までに市立中学校の全一、二年生に配布する。 (志村彰太)

 改訂版の副読本は「ヨコハマ エクスプレス」(仮称、A4判八十ページ)。現行の副読本「わかるヨコハマ」(A5判三百十九ページ)は廃止する。

 「わかるヨコハマ」では朝鮮人・中国人の虐殺について「自警団の中に、朝鮮人や中国人を殺害する行為に走るものがいた」などという記述にとどまっていた。

 二〇一二年度版では「軍隊や警察、自警団などは朝鮮人に対する迫害と虐殺を行い、また中国人をも殺傷した」と明確に記述していた。しかし、当時、市議会常任委で保守系の市議から、この記述を問題視する指摘があり、市教委が回収。翌一三年度の改訂版から「軍隊や警察」の文言は削除され、「虐殺」は「殺害」と書き換えられた。

 市教委は「議員の圧力で改訂したわけではない」と説明。表現を後退させた経緯を問題視した市民団体や歴史学者らが九月、改訂版の草稿を情報公開請求した。

 草稿で、関東大震災の項目は「開港六十年の横浜の繁栄は、一瞬にして灰となってしまいました」などの簡単な記述しかなく、虐殺の事実に触れていなかった。写真やイラストを多用する代わりに、大震災による日本人の死者数や建物の被害状況の記述もなかった。

 市民団体などは「何も書いていないに等しい」と批判。「虐殺などの史実を盛り込むべきだ」と要望書を市教委に提出していた。

 市教委は記述を再検討し、十二月に入り、おおむね内容が固まった。それによると、原稿は「死者二万三千人、行方不明者三千人、けが人四千二百人」などと大震災の横浜の被害者数を明記。その上で「混乱により根拠のないうわさが広がり、朝鮮人や中国人が殺害される痛ましい事件が起きた」と表現。「どうしてこのようなことが起きたのか、調べてみよう」とも記す予定で、「虐殺」の文言はないが、殺害の背景や原因の問い掛けも載せ、生徒に調べさせるよう誘導している。

 市教委に要望書を出した「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」の北宏一朗代表(75)は「虐殺の文言がないのは残念だが、全く触れていなかった草稿からは大きな前進だ」と評価している。

 <関東大震災後の虐殺> 関東大震災後、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などの根拠のないうわさが広がり、各地で朝鮮人や中国人への暴力や虐殺が相次いだ。正確な被害者数は分かっておらず、2008年の内閣府中央防災会議報告書では「震災による死者数の1〜数%」と推計し、数千人とみられる。横浜市立大名誉教授の今井清一さんは自著で、震災当時の在日朝鮮人の調査として「横浜市内の虐殺数を1162人」とする説を紹介。加害者について、中央防災会議の報告書は「官憲」と「民間人」とし、今井さんは「警察と自警団など」とする。

 

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