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【社会】

<子どものあした 保育士の役割> (上)小さな命を守る重み

保育士が最も気を使う乳児の昼寝時間。体調の変化がないか見守る=東京都板橋区のわかたけ保育園で(圷真一撮影)

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 待機児童対策のため保育所を増やそうとしても、保育士が足りない。「子育て経験者なら誰でも代わりが務まるのではないか」という声が上がる一方で、保育の質を保つためには保育士の存在が欠かせないとの指摘もある。子どもを守り、育てる保育士の仕事の意義をあらためて考える。

 午後七時。「終わったあ」。福岡市内の認可保育所で働く保育士の柳川紀久江さん(31)は、最後の子どもがお迎えの保護者と園舎を出て行くのを見送ると、心の中でほっと息をつく。「朝、預かった子どもをそのままの状態でお返しすることが保育士の最大の使命。子どもたちが園にいる間はずっと気持ちを張り詰めていますから」

 受け持つのは、ゼロ歳児クラス。昼寝の時間は体調の急変や突然死のリスクが高く、最も気を使う。頻繁に呼吸を確認し、布団のずれを直しつつ、体にも触れて異常がないかをチェックして書類に記入する。交代で取る昼休みも「何かあれば飛んでいかなきゃ」と気が休まらない。

 幼稚園との大きな違いは、保育所がゼロ、一、二歳の小さな子どもたちが育つ場であることだ。体調の急変や感染症も多い低年齢児の保育には、知識に裏付けされた経験が求められる。

 東京都板橋区の認可保育所「わかたけ保育園」では、ゼロ歳児は五分おきにうつぶせ寝になっていないかなどをチェックする。せきが出ている子は少し頭を高くしてあげたりする配慮も。主任保育士の山本厚子さん(52)は「単に五分ごとの作業としてするのであれば、誰でもできるかもしれない。ふだんから子どもを観察し、表情や顔色、体感などの変化に気付くのは、保育士の専門職としての役割なんです」と話す。

 三歳未満の子どもは生まれた月による成長の個人差も大きく、お昼寝だけでなく、一人ひとりに合った保育内容と発達の細かな記録が求められる。

 柳川さんの園でも、月ごとや週ごとの目標に加え、毎日の保育目標を立て、その日の生活や遊び、食事などの様子を個別に記録していく。記録は、次の年の担任保育士に引き継ぐ重要な情報だ。

 だが、そんな保育士の役割が、社会に伝わっていないのではないか−。数年前まで都内の認可保育所で働いた柳川さんは、政府が「待機児童ゼロ」の目標を掲げ、保育施設の増設が加速する一方で、現場にいる自分たちが置き去りにされているような気持ちを味わってきた。「仕事の意味を見つめ直したい」といったん現場を離れた。

 今春から、保育士を目指して大学で学んだ福岡で再び、子どもたちと向き合う。「命を長時間預かっていることの重みが、保育士資格の重み」と柳川さん。しかし、責任に見合わない低賃金や子育てと両立しにくい長時間労働などから現場を離れた「潜在保育士」は多い。「資格を持っている人は多いのになぜ働かないのか。そこに目を向けてほしい」と訴える。 

 

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