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【社会】

将棋・三浦九段に「不正の証拠なし」 第三者委「ソフトと一致」は誤認

 将棋の三浦弘行九段(42)が対局中に将棋ソフトを不正使用した疑いを指摘された問題で、日本将棋連盟が設置した第三者の調査委員会は二十六日、「不正行為に及んでいた証拠はない」とする報告書を発表した。連盟の出場停止処分については「非常事態における措置としてやむを得なかった」と判断した。

 三浦九段は疑惑が表面化した当初から、一貫して不正を否定していた。二十七日に記者会見を開く予定。連盟も同日の理事会で対応を決め、記者会見する。

 三浦九段には、複数の棋士から「特定のソフトが示す手と指し手の一致率が高い」と、不正を指摘する声が出ていた。しかし、調査委が調べたところ、一致率は計測のたびにばらつきがあり、他の棋士にも同程度の一致率の対局が数多くあったことなどから、「不正認定の根拠に用いることはできない」と判断された。

 さらに三浦九段から提出を受けた、本人と家族のスマートフォンやパソコンを解析した結果、不正の痕跡は確認されなかった。トップ棋士への聞き取り調査の結果も、三浦九段の指し手は「自力で指した手として不自然ではない」との意見が多数を占めたという。

 三浦九段は第二十九期竜王戦七番勝負の挑戦者に決まっていたが、十月の開幕直前に疑惑が浮上。年内の出場停止処分を受け、挑戦者が変更された。調査委は「そのまま七番勝負に出場していれば大きな混乱が生じることが必至だった」として、処分について「高い必要性・緊急性があった」と判断した。ただ、調査委員長で元検事総長の但木敬一(ただきけいいち)弁護士は「(将棋界)全体のために三浦九段が被った不利益はそれなりに償うという形で考えてほしい」と述べ、何らかの補償が必要との考えも示した。

◆実質的「無罪」 信頼回復が急務

 三浦九段の疑惑に関する調査委の報告は、不正の根拠とされた指摘をことごとく「証拠価値に乏しい」と断じ、実質的な「無罪判決」と言える。

 三浦九段の疑惑はほぼ否定されたものの、今回の騒動で将棋界が被った損失は大きい。その最たるものが「プロ棋士も不正をするかもしれない」とファンに不信感を抱かせたことではないか。ある中堅棋士は「これまで棋士は自分の頭だけで戦うのが当たり前であり、それが誇りだった。今回、それを疑われたことがショックだった」と嘆いた。

 将棋界の「棋士は不正をしない」という自負は、多くのファンにも共通認識となっていた。その「性善説」に基づき、ソフトを用いた不正対策は後手に回ってきたが、その認識は甘かったことが示された。

 調査委は、将棋ソフトの棋力向上で「将棋連盟は未曽有の危機に直面している」として、「現実を直視し、将棋という日本の精神文化を守るための体系的な規定を早急に整備すること」「三浦九段を正当に遇すること」などを提言した。連盟はこれを重く受け止め、揺るがされた将棋界全体の信頼回復に努めてほしい。 (樋口薫)

 

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