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【社会】

こども食堂 新宿ゴールデン街に 開店前の店舗利用

昨年4月の火災から再建した店舗を背に、こども食堂の構想を語る石川雄也さん=東京都新宿区歌舞伎町で

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 昭和の風情を残す飲み屋が集まる「新宿ゴールデン街」(東京都新宿区)が今春、こども食堂の運営に乗り出す。対象は、近所の家庭や区内の繁華街で働く家庭の子どもたち。昨年四月の火災で寄せられた支援への感謝の意も込め、主催する街の組合は「地域とともに生きる横町をめざしたい」と準備に励んでいる。 (皆川剛)

 路地に人の姿はなく、時折、外国人観光客が物珍しげにカメラを向ける。昨年十二月末、日中のゴールデン街。「ここを、子どもたちが走り回る光景を思い描いているんです」。新宿三光商店街振興組合の石川雄也理事長(43)が話す。

 組合は先月の理事会で、こども食堂の開催を決めた。ゴールデン街や周辺は全国有数の繁華街。半径一キロ以内に五つの二十四時間保育所があるが、多忙のため、親子そろっての食事がままならない家庭も少なくない。そうした人たちに参加を呼びかけ、近くの家庭にも案内状を投函(とうかん)する。

 構想のきっかけは、昨年四月に十七店舗が被災した火災だ。全国から多くの支援が集まり、大半の店舗が再建を果たした。

 石川さんの経営する店もその一つ。「街を大切に思ってくれる人が多くいることを実感した。一人一人にお礼を言うこともできないが、何か還元できないかとずっと考えていた」。地域のつながりを強め、より活気ある街にすることで応えたいと開催を決めた。

 初回は三月下旬ごろを予定する。昼から夕方にかけて、開店前の飲食店数軒が店内で食事を提供し、屋外ではベーゴマ教室などで子どもたちを迎える。風紀上の懸念に配慮し、大人にも酒類は出さない。

 うれしいことに、食材の提供を申し出る個人や団体も複数あった。将来は基金を設立し、数十店舗が輪番で参加して定期開催する計画だ。

 昼のゴールデン街は、組合員が常駐するだけで人通りがほとんどない。昨年の火災も、放火の罪で起訴された男は午後一時すぎに空き店舗に侵入したとされる。食堂がきっかけとなり、子どもが気軽に遊びに来てくれることで大人の目も届き、開かれた街にしたいとの狙いもある。

 「特に学校になじめない子に来てほしい。この街に生きる多様な大人が、子どもたちに与えられるものも少なくないと思う」

◆全国で拡大「地域と協力」「繁華街こそ必要」

 共働きやひとり親家庭が一般的になり、一人で食事をする子どもが増える中、こども食堂は昨年、爆発的な広がりを見せた。「こども食堂ネットワーク」(東京都渋谷区)に加盟する食堂の運営団体は二〇一五年末は全国で三十三だったが、昨年十二月二十二日時点で百九十となった=図。

 ネットワーク事務局の釜池雄高(ゆたか)さんは「活動を継続するには、場所や資金、人手を長期的に確保すること。来てほしい子どもに確実に情報を届けること。この両輪が機能することが必要だ」と指摘する。

 ポイントとなるのは地域との信頼関係だ。「学校や役所に活動を説明しても、すぐに協力してもらえる例はほとんどない。事例報告の資料を作り、何度も通ううちに、ようやく人の口に上り、地域に定着していく。成功している団体に共通するのは粘り強さ」という。

 ゴールデン街がある歌舞伎町周辺には、シングルマザーも多く暮らす。釜池さんは「繁華街とこども食堂の取り合わせは意外だが、実は繁華街こそ、大人たちが力を貸すべき子どもが多くいるはず。運営する人たちは、焦らずにゆっくりと活動を育ててほしい」とエールを送る。

<こども食堂> 地域のボランティアらが、無料や安価で子どもに食事を提供する食堂。2012年、東京都大田区で「気まぐれ八百屋だんだんこども食堂」を開いた近藤博子さんが名付け親とされる。

 

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